研究課題/領域番号 |
25820113
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研究機関 | 日本文理大学 |
研究代表者 |
川崎 敏之 日本文理大学, 工学部, 准教授 (30352404)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大気圧非熱平衡プラズマ / プラズマジェット / 殺菌 / 活性酸素 / プラズマ医療 / 可視化 |
研究実績の概要 |
①発生器構造,発生方法の最適化:液体中にいる菌への照射を前提に,プラズマ照射により液中に発生する活性酸素(ROS)の分布の可視化を行った。発生方法の最適化のため,印加電圧,周波数,ガス流量,酸素濃度がROSの分布に与える影響を調べた。ガス流量によって液体中に誘起される流れは変化し,それがROSの輸送と供給範囲に重要な役割を果たしていることを明らかにした。 ②殺菌特性の検証:殺菌と深い関係にあるROSに着目した実験を主に行った。液の底に到達したROSの分布を可視化することにより,プラズマの影響範囲を制御できるかを検討した。プラズマ特有の効果を明確にするために,代表的な活性酸素の1つであるオゾンガス照射との比較を行った。その結果,オゾンガスのみの照射に比べて,プラズマ照射ではより多くのROSを広い範囲に供給することが可能であり,それは照射距離に強く依存することを明らかにした。殺菌に対するプラズマ照射の有効範囲を制御できる可能性を示した。 ③殺菌メカニズムの解明:殺菌メカニズム解明にはどのような活性種,特にROSがターゲットの深さ方向に浸透,分布しているかを明らかにする必要がある。そこで,本研究ではゲル膜をターゲットにして,その深さ方向におけるROSの輸送,分布の可視化を試みた。ROSは1mm程度のゲル膜を通過することを確かめ,それが過酸化水素であると推測している。殺菌メカニズム解明には至っていないが,その重要なヒントを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度より液中殺菌を視野に入れた実験に着手し,本年度発展した部分は計画通りである。特にプラズマジェットの照射によって,活性酸素(ROS)が液中のどのくらいの深さまでどのような範囲で到達するかについて,様々な条件下で明らかにした成果は非常に大きな発展であると判断している。一方で,このROSの分布と殺菌範囲の比較検討を行うに至っていない点は当初の予定から少し遅れた状況となった。 また殺菌メカニズム解明のためのヒドロキシルラジカルなどのROSの空間分布計測は実施できていない。しかしながら,プラズマの被照射物上のROS分布の可視化に成功した点はそれ以上の成果であると判断している。当初計画していたレーザ計測では得ることが不可能な新しい情報を得ることに成功した。 以上のように,当初の計画どおり実施できていない実験項目があるが,それ以上の成果が得られていることから,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,平成27年度,ゲル膜内へのROS供給とその制御に関する実験に新しく着手した。これは殺菌だけでなく医療分野においても重要な研究課題となっている。今後は気相からゲル(液)表面,さらにはゲル(液)内部へのROS輸送という観点からプラズマの照射範囲を検討し制御する方法を詳細に調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の研究テーマと共通利用が可能な消耗品費を,校費により購入することができたため。また,当初の予定より旅費を低く抑えることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度より開始した実験項目の実施に必要な消耗品の購入増加が予想されるので,それに使用する。また,最終年度であるため,今まで得られた成果をより広く積極的に公表するための論文掲載料や国内外への旅費に使用を予定している。
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