研究課題/領域番号 |
25820122
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
渡邉 満洋 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (90532036)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超臨界流体 / 原子拡散 / 銅 / 薄膜 / 凝集 |
研究概要 |
超臨界流体中における金属拡散挙動を明らかにするため,Cu薄膜を超臨界CO2流体中においてアニール処理を施し,凝集ならびに拡散挙動について検討した.基板にはガラスまたはナノ構造が表面に形成されているSiO2/Siを用いた.これらの基板に30~150 nmの厚さのCu薄膜を堆積し,超臨界CO2流体中にてアニール処理を施した.一般に,超臨界CO2流体中にて薄膜を堆積する際には有機金属錯体原料のH2還元を用いるため,本実験では超臨界CO2流体にH2を添加してアニール処理を施した.アニールの温度は100~300℃,時間は30~60 minである. 超臨界CO2流体中でアニール処理を施した場合,Cu薄膜の表面粗さはアニール処理前や不活性ガス雰囲気においてアニール処理を施したCu薄膜の表面粗さとほとんど変化が認められなかった.それに対して,超臨界CO2流体にH2を添加して150℃以上のアニール処理を施すと,Cu薄膜の凝集が観察され,表面粗さが急激に増大した.ナノ構造に堆積されたCuはアニール処理前では連続膜であったのに対し,超臨界CO2流体にH2を添加してアニール処理を施すと薄膜の連続性は消失し,構造側壁ならびに底部にそれぞれ分離して粒状に観察された.アニール処理によって凝集が認められたCuは,Cu形状を覆う外周部においてO濃度が高いことが明らかになった.これらの結果は,Cu薄膜の凝集ならびに拡散にはCu薄膜の酸化還元反応が寄与していることを示唆している. 超臨界流体中における原子拡散を抑制する手段として,薄膜と下地の密着性が関与していると考えられる.そこで,ガラス基板とCuの密着性向上の手段を検討し,ガラス基板表面へのZnドープならびに貴金属触媒を用いることによって密着性が向上することを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に示した平成25年度計画をほぼ遂行することができ,さらに平成26年度に計画した部分の事前実験も行うことができているため.
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今後の研究の推進方策 |
平成25 年度に得られた知見を活かし,平成26 年度は原子拡散の制御に取組む.方策としては,薄膜の合金化ならびに界面密着性向上である. 一般に,純金属と合金では合金のほうが添加元素が拡散障壁となって拡散速度は低下する.したがって,薄膜を合金化することによって原子拡散を抑制できる可能性がある.そこで,例えば,平衡状態図においてCu と全率固溶型を成すNi を添加元素として用い,スパッタリング法や超臨界CO2中薄膜堆積法によってCu-Ni 合金薄膜の堆積を行い,超臨界流体中における原子拡散制御の可能性を検討する. H2を添加した超臨界流体中における加速拡散を用いて,界面反応を促進することができれば,界面において混合層が生成されて界面密着性が向上すると考えられる.そこで,界面密着層の探索ならびに界面における合金化挙動の解明に取組む.密着層には,Cu と様々な固溶度を有する金属を検討する.具体的には,まず初めに密着層をスパッタリング法によって堆積させた後,スパッタリング法または超臨界CO2 中薄膜堆積法でCu 成膜を行い,超臨界流体中においてアニール処理を行う.それぞれの構造体における原子拡散挙動を詳細に解析し,有望な密着層の選定,界面密着性と薄膜金属の原子拡散の関係を検討にする.
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