これまでに得られた超臨界流体中におけるCu薄膜の凝集ならびに拡散挙動やその抑制手法の成果に基づき,平成27年度ではCu薄膜の凝集ならびに拡散とその抑制手法の現象解明に取り組んだ. Cu薄膜の凝集ならびに拡散については,超臨界CO2にH2を添加した雰囲気でのアニール(超臨界アニール)によってCu薄膜は著しく凝集し,その凝集したCuの外周部には酸素濃度が高い領域が形成されることがわかっており,これは凝集には酸化還元反応が寄与し,Cu薄膜内へ導入された空孔が関係していることがこれまでの成果で考えられた.そこで本年度では,ナノインデンターを用いて部分的にCu薄膜内に空孔を導入したのち超臨界アニールを施し,凝集ならびに拡散を検討した.その結果,ナノインデンターによって形成された圧痕部分は回復し,さらに圧痕形成によって微細化された結晶粒の著しい粗大化が観察され,この結晶粒粗大化は圧痕形成部分以外の領域よりも顕著であった.これは,空孔導入によって酸化還元反応が促進されたことを示していると考えられ,Cu薄膜内に含まれる空孔濃度が超臨界流体中における凝集・拡散現象に関連していることがわかった. 凝集抑制手法の現象理解としては,凝集抑制に有効であったNi密着層の効果を調べるため,Niを密着層として用いた構造(Cu/Ni/ガラス),Niをキャップ層として用いた構造(Ni/Cu/ガラス),Niを密着層ならびにキャップ層として用いた構造(Ni/Cu/Ni/ガラス)に対して超臨界アニールを施し,凝集・拡散挙動について検討した.これらのそれぞれの構造に対して超臨界アニールを施した結果,いずれの構造も薄膜の凝集は観察されなかった.したがって,Cu薄膜の凝集ならびに拡散の抑制のためには,Cu薄膜とガラス基板との密着性向上に加えて,表面キャップによる超臨界CO2+H2雰囲気からの隔離が有効であることがわかった.
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