研究課題/領域番号 |
25820127
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
バン ド 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (40624804)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 還流磁壁駆動 / Spin Otbitronics / ジャロシンスキー守谷効果 / ラッシュバ効果 / スピンホール効果 / 対称型磁性細線 / 非対称型磁性細線 / 低電流磁壁駆動 |
研究概要 |
本研究課題の物理現象であるスピン軌道相互作用を介在するRahba効果、スピンホール効果、ジャロシンスキー守谷効果は、最近Spin Orbitronicsとして注目課題となり、先日のインターマグでも多くのセッションが盛り込まれるようになった。本研究においても本研究のオリジナリティである希土類遷移金属合金におけるこれらの効果を詳細に調べてきた。その結果、以下のことを明らかした。 ①対称構造のPt/TbFeCo/Pt多層膜で作成した磁性細線における電流磁壁駆動の実験を行った結果、上記Spin Orbitronics効果は上下層のPtによってキャンセルされ、磁壁移動方向は伝導電子の移動方向と同一であった。非対称構造のPt/TbFeCo/SiO2多層膜で磁性細線を作成した場合には、Spin Orbitronics効果が顕著に表れ、磁壁駆動方向は伝導電子の移動方向と逆になった。この時の磁壁駆動に必用な臨界電流密度は対称構造に比べて約50%高い値となった。この場合、同じ電流密度における対称構造と非対称構造の磁壁移動速度は大きく異なっており、本研究課題である還流磁壁駆動回路を作成する場合には、磁性膜の厚みを調整して両領域における磁壁移動速度を実現できる電流密度とする必要がある。②そこで、材料をTbFeCo合金からTb/Co多層膜に変えて同様の実験を行った。Tb/Co磁性膜の場合にも、対称構造では磁壁移動方向が伝導電子方向、非対称構造では伝導電子と逆方向になることが確認できた。ただし、この材料系では対称、非対称構造における磁壁駆動の臨界電流密度は等しく、同じ電流密度における磁壁移動速度は同じ値となり、還流磁磁壁駆動実験に適した材料であることがわかった。来年度、最終年度にはこの材料系で還流磁壁回路を試作し、本研究課題である還流磁壁動作検証を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、還流磁壁駆動を実現できる材料開発を第1目標としてきた。すなわち、対象構造と非対称構造において同じ電流で磁壁を同一速度で移動できなければメモリとして利用できない。TbFeCo磁性細線ではこれが実現できなかったが、Tb/Co多層膜に材料系を変えることで、両領域における磁壁移動速度をほぼ同等にすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度還流磁壁回路に利用できる材料系に目途がつけることができたので、最終年度である来年度にはTb/Co多層膜で対称、非対称領域を有する還流磁壁型磁性細線回路を試作する。次に、この対称/非対称切り替え領域に付加する電極形状を検討する。もっとも重要なポイントはこの切り替え部で磁壁が留まることなく移動できるかという点である。できるだけ細い電極形状にすることや電極をジグザグ形状にすることで、切り替え部における磁壁移動に支障が出ないように検討を重ねる。これが実現できて、かつ両領域における磁壁移動速度が予定通り一定となれば最終目標である還流磁壁移動型回路の完成となる。この目標を達成するための再現性やプロセスマージン拡張にもチャレンジしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
思いのほか材料選定を早期に行うことができたためわずかに消耗品費が残った。 残金は来年度の試料試作に使用する。
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