研究課題/領域番号 |
25820128
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
加藤 有香子 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 主任研究員 (90509837)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / パワーデバイス / X線トポグラフィ / ラマン顕微鏡 / 複屈折顕微鏡 |
研究概要 |
いくつかの手法を用いてIb型ダイヤモンド基板の結晶性を評価した。Ib型ダイヤモンドは、デバイス用基板として一般的に用いられる、絶縁性基板である。この基板のX線トポグラフィ像および複屈折顕微鏡から、転位密度の平均が10^4であることが分かった。 また、この基板に半導体ダイヤモンドを成長させて、ショットキーバリアダイオードを作成した。耐圧特性を評価したところ、リーク電流が1mAに到達したときの電圧が300~1000超Vとばらつきが見られた。そこで、逆方向特性の要となる低濃度p型半導体ダイヤの転位を、X線トポグラフィ像を用いて評価した。その結果、全体の転位密度(3×10^4)に対して、各電極の中にある転位密度はばらつきがあり、また、各電極中にある全転位密度と耐圧特性には相関がみられないものの、転位種ごとに評価すると、大きな転位束と耐圧特性との相関が顕著であるという結果がみられた。 これまで、ダイヤモンドパワーデバイスの高度化には、低濃度p型半導体ダイヤモンド中の転位束を減らす必要があることは概念的に示唆されてきていた。今回の実験結果によって、それを耐圧特性と転位密度の相関として、定量的に示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダイヤモンドパワーデバイスの高度化を目指す過程で、ショットキーバリアダイオードを作成、デバイス特性を評価し、基板とドリフト層内部の転位の密度と転位種との相関を定量的に示すデータを得ることができたから。 これらのデータを用いて、来年度は転位束のないショットキーバリアダイオードの作成とデバイス特性の向上が達成できると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今回明らかになった、デバイス特性に悪影響を及ぼす転位束を、CVDダイヤモンド合成中に作り出さないように、CVD合成条件を再検討する。 また、引き続き、ショットキーバリアダイオードを作成し、デバイス中の結晶品質評価とデバイス特性評価を行い、転位束以外にもデバイス特性に悪影響を及ぼすファクターがないかどうかを検証する。 転位以外のファクターとして、結晶歪の評価を行う。評価手法は逆格子空間マッピングを検討中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
エピ膜観察用X線トポグラフィ観察ジグを当初予定よりも安価に導入することができた。また、材料費として計上していたメタンガス、トリメチルボロンガス、X線トポ撮影用原子核乾板(ホログラフィープレート)は在庫分を利用することができたので、次年度使用額が生じた。 翌年度分として、物品費は、昨年度計上したホログラフィープレートの購入、実験試料としてダイヤモンド基板の購入及び合成前処理のための研磨代、いったん合成した試料を再利用する際にかかる再生研磨代、材料ガス代、デバイスプロセス時に要するメタルマスク等消耗品代に利用したいと考えている。また、秋に開催される国際学会に参加するため、その出張旅費・参加費として助成金を利用したい。
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