電力制御系統でのエネルギーロスを抑えて、省エネルギー社会を実現するために、新しい材料を用いた電力制御素子(パワーデバイス)の開発が急務となっている。新しい材料の一つ、ダイヤモンドは、高耐圧のパワーデバイス応用が期待される材料であるが、現状では理想の数十分の1の耐圧特性しか出すことが出来ていない。本申請課題ではダイヤモンドの結晶性、特に転位に着目し、転位が耐圧特性低下の要因になっているのかを議論した。 疑似縦型ショットキーバリアダイオードを複数作製して各素子の耐圧特性を評価した後、デバイス構造中の半導体ダイヤモンド層の転位分布を位相差顕微鏡で観察し、またX線トポグラフ法で転位種の同定を行った。 疑似縦型ショットキーダイオードの耐圧特性と転位分布および転位種の同定結果を比較した結果、刃状転位と未同定の欠陥を内包する疑似縦型ショットキーダイオードの耐圧特性が、著しく低いことを見出した。刃状転位については、以前、基板研磨手法の最適化により半導体ダイヤモンド中での発生を抑制できることを見出している。未同定の欠陥はX線トポグラフ法では同定できなかった欠陥であり、転位束か不純物の可能性があるが、平成27年度中に結論を得ることはできなかった。 本結果は、国内学会、国際筆頭論文で報告した。また、国内学会誌(NEW DIAMOND)に寄稿したX線トポグラフ法の総論の中で、応用編として、本結果の概要をまとめた。
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