研究課題/領域番号 |
25820129
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山田 英明 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 主任研究員 (90443233)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プラズマ / ダイヤモンド / シミュレーション |
研究実績の概要 |
大面積に渡る単結晶ダイヤモンドの厚膜化を可能とする条件の最適化を試みた。特に、基板温度と窒素濃度に着目した。継続的に成長できる最適な基板温度は、気相中の窒素濃度に依存性を持つことを見出した。高温側では異常成長粒が成長することが知られているが、低温側での挙動を明らかにした。アンドープ成長の場合、Band-A発光との対応から、転位部分が選択的にピット状のモフォロジを形成することが分かった。Nドープ成長の場合、Nが表面を活性化して合成速度向上に寄与する一方で、過度な取り込みは成長核の過剰供給を齎し、ナノダイヤ化することを明らかにした。 昨年度の結果から、合成速度の面内一様性も基板温度によって左右されることが判っていたので、基板温度の一様化を可能とする放電条件を探索し、合成速度と品質の一様性を向上する条件を見出した。これまで合成速度の非一様性が40%程度以上であったが、15%程度以下に抑制できた。また、合成中に基板-熱浴間の熱抵抗が変化し、基板温度の低下による成長方向のN濃度変化を見出した。成長時間を調整することで、数倍程度の濃度変化を1割程度以下に抑制できた。 一方、昨年度用いた反応性プラズマモデルによる2次元のシミュレーションを様々な条件で実施し、合成速度の面内分布を数値的に見積もったところ、中央部での絶対値は実験と矛盾が無いのに対して、その径方向分布は実験結果と矛盾が見出された。これまでの成長モデルでは、プリカーサとして主にCH3の寄与が着目されてきたが、原子分子シミュレーションの結果からは、CやC2Hなど、不対電子を多く持つラジカルの吸着確率が高いことが示唆された。これらの反応性の高いラジカルの寄与を考慮した、合成速度を予測するモデルを新たに提案し、実験的に得られる合成速度の絶対値のみならず、基板面内分布、基板温度依存性をよく説明できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り、合成速度および品質を左右する重要なパラメータを特定し、インチサイズの領域で一様性を向上する合成条件を特定できた。これは、来年度取り組み予定の合成装置改良において重要な礎となる知見である。また、シミュレーションと実験とを比較することで、点ではなく、面での合成速度の予測やメカニズムを説明することができ、支配的と思われるラジカル種を特定することができた。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現状の合成装置で、基板温度の制御を可能とする取り組みを実施する。具体的には、外部からの追加熱や、ホルダ周辺の構造を改善して熱接触を制御する。また、見出した厚膜合成条件を基に、1mm超のバルク結晶の安定成長を試みる。厚膜化に伴う結晶品質の劣化に注意し、オフ角・オフ方向の最適化、合成速度の調整などにより、品質を維持可能か検証する。基板面内のそれぞれの位置およびそれぞれの膜厚で、カソードルミネッセンス、顕微ラマン分光、X線回折などを用いた品質評価を実施する。 一方で、新規合成装置の方針としては、基板温度の制御性を向上することが望ましいが、現状の合成装置では、効率が悪く対応が困難となる場合が予想される。このため、新規プラズマ源を取り扱うグループと共同で、新規ダイヤモンド合成装置の開発の取り組みを開始する。
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