最終年度である平成27年度は低電圧静電駆動型のマイクロ三次元スキャナのための、(1) 焦点可変ミラーのスキャナへの集積プロセスの開発、及び、(2) 焦点可変ミラーの低電圧駆動を目的とした音響空洞構造の解析を実施した。 (1) レーザー光を三次元的に操作するために必要とされるスキャナと焦点可変ミラーの一体デバイスに関するプロセス開発と製作を行った。これまで報告されている表面マイクロマシニングによる薄膜構造を用いたデバイスでは構造の剛性が低く設計自由度が制限されていた。測定対象に合わせた、設計自由度の高いデバイスを製作するため、厚膜構造が得られかつ機械特性にも優れた単結晶シリコンを構造材料として用いることが可能な、Silicon-on-insulatorウエハの接合を用いた製作プロセスを確立した。対象に合わせ、焦点可変ミラーの直径、駆動電圧、焦点可変範囲、共振周波数、及びスキャナの共振周波数の詳細設計を可能とするプロセス開発とデバイス駆動に成功した。 (2) 昨年度は、音響空洞長により焦点可変ミラーの振動振幅が約4倍変化することが確認された。本年度は、振動振幅の最適設計のため、音響空洞の解析モデルを提案し、従来結果との比較を行った。提案した解析モデルが実験結果とよく一致することを確認し、振動振幅最適化のための設計指針を立てるのに有用な結果を得た。 研究期間全体を通じ、低電圧静電駆動型のマイクロ三次元スキャナのためのプロセス開発、および機械共振構造や音響構造を用いた低電圧化技術の開発、顕微鏡システム構築のための画像表示システム開発を行った。高精度な生体計測用デバイス実現へ向けた基礎技術開発に成功した。
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