研究課題/領域番号 |
25820133
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木野 久志 東北大学, 医工学研究科, 特任助教 (10633406)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 集積エレクトロニクス / 高密度実装 / プロセス技術・微細加工 / 半導体材料・デバイス |
研究概要 |
本研究は三次元集積回路(3D IC)内の異種材料間の熱膨張係数差が薄化ICチップに与える局所曲げ応力の影響を調査するものである。特に回路動作の発熱に起因した有機系接着剤の熱膨張による影響についての詳細を定量評価することを目的とする。 本年度は曲げ応力の影響を定量測定するための評価試料を作製し、作製した試料を用いることでマイクロバンプと有機系接着剤間の熱膨張係数差による局所曲げ応力を薄化したICチップに印加した。薄化したICチップ上に形成された最も基本となる電子回路であるCMOSインバータの入出力特性を測定した。結果、局所曲げ応力の印加前後でのCMOSインバータのスイッチング電圧の上昇確認に成功した。CMOSインバータは圧縮応力が印加される箇所に設置されており、圧縮応力に起因したnMOSFETの駆動電流低下とpMOSFETの駆動電流増加がスイッチング電圧の変動原因と考えられる。このようなマイクロバンプと有機系接着剤間の熱膨張係数差によるCMOS回路の特性変動の取得はこれまでに類がなく、非常に優位な知見であるといえる。 さらに、作製した試料を過熱ヒーターに設置し、温度変化による薄化ICチップ上のMOSFETの電流-電圧特性を測定した。結果、局所曲げ応力を印加していないMOSFETの測定では熱印加に起因した移動度低下による駆動電流の大幅な低下が観測されたが、曲げ応力を印加したMOSFETの駆動電流は大きく低下しなかった。これは曲げ応力により移動度が向上したためと考えられる。このように、発熱に起因した有機系接着剤の熱膨張による影響の測定の成功は、高い信頼性を有する3D ICの実現に必要不可欠であると考える。 以上のように発熱の影響測定の他にも回路特性の変動という当初の想定以上の結果を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書における平成25年度の計画は計算による曲げ形状の予測、局所曲げ応力の影響評価試料の作製、MOSFETの特性変動の取得であった。曲げ形状の予測は材料力学の知見を元に計算した結果と十分に一致しており、作製した局所曲げ応力の影響評価試料により静的および動的のいずれの場合においてもMOSFETの特性変動を取得していいる。よって、当初の計画どおりおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は当初の計画通りに研究を遂行する。具体的にはバンプサイズや密度、ICチップの厚さなどを変化させて様々な状況での曲げ応力の影響評価を行い、有機系接着剤の熱膨張係数、薄化チップの厚さ、動作温度を入力変数とした3D IC の動作熱による機械変形のモデル化のためのパラメータ最適化を行う。 さらには3D ICの信頼性向上のために、局所曲げ応力の抑制手法も提案する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請予算額からの減額により当初予定していた外注LSIチップの個数が半数となった。そのため、外注LSIチップを全て平成26年度での研究に充てるように計画を変更したため、当初平成25年度発注予定であったLSIチップの外注試作費が次年度使用額として残した。 次年度使用額として残した予算はLSIチップの外注試作費に充てる。本事業で外注試作予定のLSIチップは平成25年度および平成26年度の両方で使用予定であったが、申請予算からの減額により平成26年度のみ本事業で外注試作したLSIチップを使用する計画へ変更する。
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