研究課題/領域番号 |
25820136
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
清水 隆志 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80500397)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 帯域通過フィルタ / 超伝導 / ミリ波 / 材料評価 / 共平面回路 |
研究概要 |
データ無線通信量の急激な増加が既存の無線通信システムの周波数帯域ひっ迫の大きな要因となっている。このため、大量の無線データ通信の一部を周波数ひっ迫度の低いミリ波帯へ迂回させる研究開発が盛んに行われている。この時、周波数有効利用の観点から、急峻な遮断特性を有する低損失ミリ波フィルタが将来必要不可欠となる。 平成21-22年度研究開発において、研究代表者は、高Q値が得られるコプレーナ構造円形スロット共振器(CCSR)およびCCSRを用いた2重モード30GHz帯2段BPFを提案し、比帯域幅1%, 挿入損失0.2dBの超低損失特性をもつ優れた構造であることを計算により示してきた。 本研究の目的は、提案構造の試作・実測を通し、さらなる高性能フィルタの開発を行うことである。 本年度は、これまでデータ拡充を図ってきたミリ波材料データベースより判明した低損失材料であるアルミナ基板・銅導体を用いて、30GHz帯, 比帯域幅1%, CCSR構造2段BPFの設計・試作を行い、常温における特性を評価した。その結果、中心周波数29.7GHz、3dB比帯域幅0.90%、挿入損失2.4dBを有する低損失ミリ波帯域通過フィルタを実現し、提案したCCSR構造の有効性を実証した。さらに、通常複数回の試作が必要な所、本研究では、ミリ波材料データベースの充実により1回の試作により設計仕様を満足したフィルタを実現した。また試作したすべてのフィルタは、ほぼ同じ特性を示しており、製作精度の影響を受けにくいレイアウトパターン設計が行えたことを確認した。 さらに、c面, a面, r面各サファイア基板のミリ波複素誘電率測定を行い、結晶軸に応じた複素誘電率を明らかにし、CCSR構造をr面サファイア基板上に設計するための基礎データを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度を上記と自己点検した理由は下記のとおりである。 ミリ波材料DBより判明した低損失材料アルミナ基板・銅導体を用いたCCSR, 30GHz帯, 比帯域幅1%, 2段BPFの設計・試作を行い、常温にて特性を評価した。その結果、中心周波数29.7GHz、3dB比帯域幅0.90%、挿入損失2.4dBを有するフィルタを実現し、その有効性の実証し、常温における目標値を達成した。また、低温下の挿入損失の目標値3dB程度に対し、室温で2.4dBを達成しており、材料損失が原書する低温化においても目標値は達成可能であることを示した。 さらに、c面, a面, r面各サファイア基板のミリ波異方性複素誘電率測定を行い、結晶軸に応じた複素誘電率を明らかにした。また、新たなミリ波低損失材料を見出すことを目的に、これまでに構築してきたミリ波帯材料定数DBの拡充を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方法として、フィルタ特性の高性能化に関する検討を行う。CCSRを複数配置(多段化)し、フィルタ遮断特性の急峻化を検討する。CCSRは、1つの共振器に存在する2つの共振モードを利用可能である。このため、複数共振器を配置した場合、従来構造に比べ、面積寸法の小型化の点で有利である。また、多段化によるフィルタ特性向上が困難な場合は、飛び越し結合を用いた有極化による特性向上を検討する。 さらに、低損失材料アルミナ基板・銅導体を用いた30GHz帯, 比帯域幅1%を有する4段BPFの設計・試作を行い、常温および低温下にて評価を行う。 常導体の試作結果および高性能化に関する検討結果を踏まえ、比帯域幅1%を有する30GHz帯4段超伝導BPFの設計・試作・評価を行い、提案構造の有効性を検証する。挿入損失の目標値としては、極低温化にて0.5dB程度とする。 目標が達成出来なかった場合、26年度結果を踏まえ、平成27年度に再試作を行い、目標達成を目指す。
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