研究実績の概要 |
データ無線通信の急激な増加が既存の無線通信ステムの周波数帯域ひっ迫の大きな要因となっている。このため、大量の無線データ通信の一部を周波数ひっ迫度の低いミリ波帯へ迂回させる研究開発が盛んである。この時、周波数有効利用の観点から、急峻な遮断特性を有する低損失ミリ波フィルタが将来必要不可欠となり、重要性を増してくる。 平成21-22年度研究開発において、研究代表者は、高Q値が得られる共平面構造円形スロット共振器(CCSR)およびCCSRを用いた2重モード30GHz帯2段BPFを提案し、比帯域幅1%, 挿入損失0.2dBの超低損失特性をもつ優れた構造であることを計算により示してきた。 本研究の目的は、提案構造の試作・実測を通し、さらなる高性能フィルタの開発を行うことである。 本年度は、平成25-27年度の研究結果を踏まえ、常温におけるCCSR共振器の配置方法および帯域外特性の高性能化に関する検討を行った。また、新たな構造として、Hスロット形共振器を用いたミリ波フィルタを検討した。また、高Q特性とスプリアス特性に優れたHスロット共振器の設計チャートを作成した。以上の結果、CCSR共振器よりもHスロット共振器を用いることで、同程度の高Q値、遮断特性が得られることを明らかにした。さらに、Hスロット共振器は、帯域外特性にも優れることを3次元電磁界シミュレーションにより明らかにした。 さらに、低損失回路基板や薄型回路基板用各種誘電体材料のミリ波複素誘電率の周波数依存性測定および温度依存性測定を明らかにした。また各種導体の表面および界面の表面抵抗評価を明らかにした。これらにより、CCSR構造およびHスロット構造フィルタを常導体基板や超電導体基板上に設計するための基礎データの拡充が行えた。
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