回路基板に生じる数pF程度の寄生容量や数nHの寄生インダクタを無視することが出来ないMHzからGHz帯の電源回路設計において、それらの寄生結合を正しく抽出することは非常に重要である。電磁界解析のみに頼る設計法では現象の理解が困難であり、最適な設計を行なうことが難しい。 そこで、本年度はアナログICのパッケージおよびICの内部回路について、外部測定による線形等価回路モデル構築法および寄生結合による共振の発生を予測し低減する方法について検討した。提案した手法では、内部回路をIC部分とパッケージ部分に分けてモデル化を行い、さらに内部回路をある程度の機能ブロックに分割してモデル化した。構築した等価回路モデルを評価するために、作成したモデルを用いて妨害波印加耐性試験のシミュレーションを行い実測と比較した結果、1GHzまでの周波数範囲において誤差3dB程度で予測できた。また、回路の共振やそれによるインピーダンスの変化により、妨害波耐性が大きく変化することを示し、共振の抑制手法について検討した。さらに、大電力妨害波を印加した場合には非線形性が表れ、特定の周波数範囲では線形等価回路では表現できないことを示し、大電力印加時のSパラメータによるIC内部の電源分配回路特性の表現法を提案した。 本研究課題を通して、プリント回路基板のグランドプレーン間の寄生結合に起因する共振現象の等価回路モデル化およびアナログICおよびパッケージの等価回路モデル化を行い、電子部品の電源分配回路の等価回路構築法を提案した。共振現象はICの内部回路とプリント回路基板上それぞれの寄生結合が同時に関与していることを明らかにし、作成した等価回路によりそれらの共振が予測可能であることを示した。
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