研究課題/領域番号 |
25820146
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
山本 真一郎 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10514391)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 反射・透過制御材 / 人工材料 / 金属線配列材 / 誘電体 / 遮蔽量測定装置 / ミリ波帯 |
研究概要 |
○人工材料を用いた反射・透過制御材設計法の確立について 金属線周期配列材と誘電体を積層した反射・透過制御材設計法の確立に取り組んだ。金属線周期配列材として、無限長の金属線を等間隔で平行に配列した材料を用いた。まずは、配列材の等価的な比誘電率を自由空間法により測定し、金属線配列間隔および金属線直径と比誘電率の関係を検討した。この結果より、比誘電率は負の値を示すことを確認し、配列間隔、直径が小さくなるにつれ、比誘電率も大きくなることを確認した。 次に、金属線配列材と誘電体の積層構造について検討した。金属線配列材自体の比誘電率は負の値を示すため、比誘電率が正の値である誘電体と組み合わせることによりある周波数帯で積層構造全体の等価的な比誘電率を自由空間と同じ1に設定できる。これを基に、実際に金属線配列材と誘電体であるガラス板を用いることにより反射・透過制御材を設計した。具体的には、ガラス板両側に金属線配列材を積層した構造、金属線配列材両側にガラス板を積層した構造により、バンドパスフィルターとしての特性を示すデバイスが設計可能であることを確認した。 ○ミリ波帯における電磁遮蔽量測定装置の開発について ミリ波帯に対応した電磁遮蔽量測定装置を作製した。具体的には26.5GHz~40GHzにおいて板状遮蔽材が評価可能な装置構成とした。送受信アンテナは地面に対し上下方向に配置し、送受信アンテナ間に測定試料台を配置することにより、測定のし易さを改善した。また、装置内部を送信アンテナ側と受信アンテナ側で完全に分離し、不要な電波散乱をなくすために、装置内部全面を電波吸収体で覆った。 まず、上記測定装置のダイナミックレンジ(遮蔽量測定可能範囲)を測定し、60dB程度の遮蔽量であれば評価可能であることを確認した。その後、数種類の遮蔽材を測定し、妥当な結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
○人工材料を用いた反射・透過制御材設計法の確立について 本課題については、当初の研究計画通りに進行している。具体的には、メタマテリアルの一種である無限長金属線周期配列材について、その比誘電率特性と金属線配列間隔、金属線直径との関係について有効な結果が得られた。また、金属線配列材と誘電体を組み合わせた反射・透過制御材の設計も実現できた。 ○ミリ波帯における電磁遮蔽量測定装置の開発について 本課題については、実施計画通りに遮蔽量測定装置の作製、ダイナミックレンジの測定の順で取り組んだ。測定装置の作製では、当初の計画では高さ、幅、奥行きがそれぞれ1.6m、1.0m、1.0mの構成で作製予定であったが、装置上部にミリ波回路部を構成し、受信器としてスペクトラムアナライザを用いた構成にすることにより、高さ、幅、奥行きが各々0.86m、0.5m、0.9mの構成で実現でき、当初の予定に比べて高さが半分程度の規模で作製できた。また、測定のダイナミックレンジについても60dB程度確保でき、一般的な電磁遮蔽材の評価が可能な測定装置が達成できた。 以上の研究成果により、本研究課題についてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
○人工材料を用いた反射・透過制御材設計法の確立について 反射・透過制御材の実用化に向けた基礎データを得るための研究を実施する。まずは制御材の構成に必要な誘電体について検討を加える。平成25年度では、誘電体として主にガラス板を用いた。そのほかに一般的な誘電体材料としてはアクリル板、テフロン板等が挙げられる。これらの誘電体を金属線配列材と組み合わせることにより反射・透過制御材が構成できるか検討する。これによりガラス板を用いた制御材に比べ軽量なデバイスが構成可能であると考えられる。また、ガラス板と金属線配列材の積層構造についてもさらに検討を加える。具体的には、金属線の材質、ガラス板の厚みと反射・透過特性の関係について研究する。これにより窓ガラス等への本制御材の応用が期待できるものと考えられる。 ○ミリ波帯における電磁遮蔽量測定装置の開発について 平成25年度に作製した遮蔽量測定装置のダイナミックレンジの向上、種々の材料の電磁遮蔽量の測定を順次行っていく。一般的な遮蔽材の評価としては、60dBの遮蔽量が測定できれば十分であるが、導電性が非常に高い材料になると80dB程度の測定範囲も必要となる。そこで、作製した装置内部に隙間が存在しないように、継ぎ目部分等に電波吸収体、導電テープを貼り付けることによりダイナミックレンジの改善を試みる。また、送受信アンテナを取り替えることにより18GHz~26.5GHzでの評価も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、遮蔽量測定のために必要な同軸ケーブルを購入予定であったが、既存の同軸ケーブルを用いることにより測定が可能であったため。 次年度使用額は、遮蔽量測定装置のダイナミックレンジ向上のための導電テープの購入に充てる。
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