研究課題/領域番号 |
25820149
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
高倉 健一郎 熊本高等専門学校, 情報通信エレクトロニクス工学科, 准教授 (70353349)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 酸化物半導体 / 透明導電膜 / 酸化ガリウム / フレキシブルデバイス |
研究実績の概要 |
酸化物半導体は,アモルファス状態でも結晶体の移動度と同程度である材料があり,その特徴を生かしたフレキシブル薄膜トランジスタが実現されている.酸化ガリウムは,無添加のバンドギャップが4.9 eVであり,高い絶縁耐圧が期待される酸化物半導体材料である.また,室温の移動度が300 cm2/Vsと予測されており,高いポテンシャルを有している.本課題では,酸化ガリウムを利用したフレキシブル薄膜トランジスタを開発することを最終目的として,アモルファス薄膜作製,不純物添加ならびにトランジスタ形成を検討した. 酸化ガリウム薄膜トランジスタを実現するためには,伝導型を制御する必要がある.アンドープ酸化ガリウムはn型伝導を示すことが知られているが,たとえばスズは自由電子を供給するドナーとなり,亜鉛は正孔を供給するアクセプタとなることが知られている.そこで,これらの不純物を添加することにより伝導型制御を試みた.不純物は,製膜時に同時に導入することにより実現を試みた.現有のスパッタ装置は,三種類のターゲットを同時にスパッタすることが可能であり,不純物量を精密に制御できる.ターゲットには,酸化ガリウムの焼結体と不純物源(スズ,亜鉛)を使用して,基板上に堆積した.作製した酸化ガリウム膜中への不純物取り込み量は,EDX測定などにより実際の取り込み量を決定した. 不純物添加は,酸化ガリウムの結晶性をアモルファス状態に保つために,低温でのプロセスとなる.不純物活性化のためには,製膜温度は高温であるほうが望ましく,可能な限り製膜温度を高く設定する必要がある.製膜温度と結晶性およびキャリア密度の関係を詳しく知るために,X線回折法により酸化ガリウムの結晶性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,酸化ガリウム膜中への不純物取り込みおよび伝導型制御を試みた.酸化ガリウムと不純物を別個にスパッタする多元スパッタ法による不純物取り込みを検討したが,不純物量および製膜速度の制御が難しく,最適条件を得るための検討を行っている. 課題最終年度となる今年度は,伝導型制御を実現した後に,トランジスタ構造を形成する予定であったが,伝導型制御技術確立が遅れていること,また,MIS構造によるトランジスタ実現のための酸化ガリウムとのショットキー接触を実現する金属の探索が済んでおらず,まずは,これらの検討を進める必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,不純物添加量制御方法の確立を早急の課題として取り組む.そのために,酸化ガリウム原料そのものに不純物を導入したターゲットを作成する.導入量は固定化されるものの,製膜速度制御性を優先させ,不純物添加による伝導型制御を最優先とする. これと並行して,ショットキー接合の実現のために製膜した酸化ガリウム膜上に金属電極形成を行い,最適な材料及び作成条件を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた酸化ガリウム中への不純物ドーピングの進捗状況が思わしくなく,その後の研究計画の変更が必要となったため.
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次年度使用額の使用計画 |
新たにスパッタターゲットやショットキー電極用金属などの原料購入費として使用を予定している. また,FET作製用リソグラフィー工程に利用するためにフォトマスクの作製を予定している.
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