平成25年度は,ノイズ電界を含んだ通信チャネルの等価回路を静電界における重ね合わせの原理に基づいて導出したが,その正しさに対する疑問の声も幾つか頂いていたため,平成26年度は,数学的により詳細な証明を行った.具体的には,(1)導体上の誘導電荷によって生じる静電位は電荷密度分布とグリーン関数を含んだ積分表現となり,これが線形演算であること,(2)任意の導体電位とノイズ電界に対して導体上の電荷密度分布が一意的に決定されること,以上の2点より,導体に誘導される総電荷が,(1)ノイズ電界が存在しない場合の誘導電荷と(2)全ての導体が接地された状態でノイズ電界により誘導される電荷の合計となることを示した.この表現は線形回路網における節点方程式と同型のため,導体系に対応する等価回路を一意的に決定できる. また,上記の等価回路が実際のノイズ環境をどの程度モデル化できているのかを検証するため,実測による検討を行った.具体的には,小型バッテリーで動作する簡易電力計をウェアラブル電極上に実装し,これを人体上の様々な位置に装着した際の受信ノイズレベルを計測した.その結果,高周波安定器により駆動される蛍光灯の近傍では,蛍光管から発せられるノイズ電界によって人体全体が分極していることが受信ノイズレベルのプロファイルから読み取れ,この現象がノイズ電界の存在に基づく等価回路モデルで説明できることがわかった.一方で,ウェアラブル電極の片方を商用電源の保安アースに接続した場合,ノイズ電界の存在に無関係な受信ノイズレベルのプロファイルとなり,この効果を等価回路モデルに取り込むのが今後の課題として残された.
|