本研究では、非同期型分散データ圧縮、特に非同期型分散無歪みデータ圧縮と非同期型 Wyner-Ziv 符号化に対するデータ圧縮法の性能解析を十分に行うことを目的とし、本年度は非同期型分散無歪みデータ圧縮の研究を中心に取り組み、以下の成果を挙げた。 1.非同期型分散無歪みデータ圧縮に対するデータ圧縮法の性能解析について:以下の成果では、遅延の最大値は復号器において既知であるが、実際に発生した遅延は符号化器と復号器において未知であることを仮定している。 (1)沖らの成果を拡張し、遅延の最大値がデータ列長と共に変化する場合において、復号誤り率を任意に小さくできるデータ圧縮法の圧縮率の限界と、その限界を達成するデータ圧縮法の存在を示した。その結果、一般には符号化器が完全に同期している場合と同一の圧縮率を達成することは不可能であることを示した。 (2)符号化器と復号器において情報源の統計的性質が未知の場合でも対応できるデータ圧縮法の存在を示し、この場合の圧縮率の限界を明らかにした。 2.非同期型 Wyner-Ziv 符号化に対するデータ圧縮法の性能解析について 遅延の最大値は符号化器と復号器において既知であるが、実際に発生した遅延は符号化器と復号器において未知である場合に、復号の際に歪みが許容値を超える確率を任意に小さくできるデータ圧縮法の圧縮率の限界と、その限界を達成するデータ圧縮法の存在を明らかにした。
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