研究課題/領域番号 |
25820155
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
市野 将嗣 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (80548892)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生体認証 / 核非線形相互部分空間法 / 行動的特徴 |
研究概要 |
生体認証には指紋や静脈などの身体的特徴に基づいた認証と音声,筆跡などの行動的特徴に基づいた認証の2種類がある.その中でも,例えば音声では携帯電話で話している最中でも本人認証を行うことができるなど人間が普段から行っている行動の中の情報を取得することで認証が可能なケースが多いため,近年,行動的特徴に基づく生体認証が注目されている. 行動的特徴は扱う対象がS字のような非線形な分布になることが多いため,核非線形相互部分空間法(KMS)が有望である.KMSは軌跡の概形を抽出し,学習・入力データとの軌跡の概形同士のなす角度を類似度として識別する手法である.認証する上で重要である個人性情報を浮かび上がらせて軌跡の概形を抽出する手法について検討している. 各個人の個人性が強い部分を浮かび上がらせるために,多人数の共通する情報である音韻性情報を抽出する.まず,音声は性別など属性毎に共通の特徴があるためその情報をそろえて音声データを重ね合わせないと共通する音韻性情報を抽出することができない.そこで,今年度は唇動作データから性別を識別する手法を確立することに取り組んだ. 唇動作のデータに対して混合ガウス分布モデルを用いてサンプル点毎の男性らしさ女性らしさを表すスコアを求め,スコアの時間的な変化を見ることで,男性・女性を分離できる可能性があることを確認した.そして,その知見に基づいてスコアの変化をスコアの伸び(傾き)で表し,そのスコアの伸びを用いた男女識別手法を提案し,実験的に提案手法の有効性を示した. また,KMSが有効に機能する理由を音声による話者認識を対象に考察した.具体的には(1)部分空間・複数の正準角による認識,(2)核非線形主成分分析による雑音除去の効果,(3)学習・入力データをそれぞれ部分空間で表現して分布同士を比較することにより認識,の3つの観点から考察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
唇動作と音声を用いた男女識別手法について検討を行ったのは予定通りである.個人性が強い部分を浮かび上がらせる手法の確立についての検討を行うに当たり,今年度は核非線形相互部分空間法が行動的特徴に基づく生体認証において有効になる理由を評価実験などを通して明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
今年度検討を行った核非線形相互部分空間法が行動的特徴に基づく生体認証の有効性に関する検討に基づいて,個人性が強い部分を浮かび上がらせる手法の検討を行う予定である.その中で正準角の融合方法も重要課題の1つと考えられるため,唇動作における話者認識に対しての正準角の融合方法についても検討を行う予定である.研究成果については適宜,国際会議や論文誌への投稿を進めていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は理論的な検討が中心であったため,当初予定していた計算機の購入を次年度に繰り越したため. 現在投稿中の国際会議への旅費として使用する予定である.さらに論文誌投稿を進めるためその費用も予定している.また,本研究に関連のある国内会議,国際会議等に参加して情報収集を行う.また,研究の進捗状況に応じて,評価実験を行うための計算機やソフトウェアの購入を予定している.
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