本研究は,エネルギー局在現象(空間局在モード)のナノテクノロジーへの応用を目指したものである.平成27年度は,MEMSによるカンチレバーアレイと力学的アナロジーの成り立つ電磁機械系モデルにおいて,パラメトリック励振で安定な空間局在モードが不安定化されうることを数値的に確認した.このことは,空間局在モードの制御において,パラメトリック励振が有用であることを示唆している.空間局在モードの生成については,前年度に引き続きノイズ励振による手法を検討し,数値計算においても実験と同様の現象を観測することに成功した.これにより,ノイズをうまく利用することで,空間局在モードを生成することが出来ることが示された. 一方,ナノテクノロジーへの応用に向けた検討として,炭素原子鎖における空間局在モードの解析を行った.炭素原子鎖において,炭素原子は鎖の軸方向以外にも自由度を持つ.この特徴による影響のみを考察するため,よく知られた1次元FPU格子を3次元空間に配置したモデルを解析対象とした.前年度に引き続き,軸に垂直な振動成分を持つ空間局在モードの存在条件や安定性,分岐解析を行った.また,軸周りに回転する空間局在モードの存在も新たに見いだした. 移動型空間局在モードは運動エネルギーを運ぶため,ナノテクノロジーにおける応用に特に重要であると考えられる.しかしながら,厳密な解析はほとんど行われてこなかった.そこで,マイクロカンチレバーアレイを模したモデルにおいて移動型空間局在モードを周期解として定義し,その安定性や分岐の解析を行った.結果,移動速度が同じでも異なる振幅分布を持つ解が多数存在することを明らかにした.また,安定となるパラメータ領域が狭いことも明らかにした.
|