研究課題
標準暗号DES(Data Encryption Standard)やAES(Advanced Encryption Standard)などに代表されるブロック暗号では,非線形変換関数S-boxが,暗号全体の安全性と実装性能を大きく決定するため,その設計がとりわけ重要とされている.S-boxの設計として従来より,DESにみられるランダム置換やAESにみられるガロア拡大体の逆元を用いる手法がよく知られている.一方で不規則現象カオスの暗号への応用がいくつか提案されているが,暗号用一対一写像の構成が課題となり,既存の方式と比べて実装性能に問題があった.そこで本研究では,実装効率に優れる一対一デジタルカオス写像の設計方針を与え,簡単な整数演算のみを用いる区分線形写像に基づき,ブロック暗号用非線形変換関数S-boxを設計した.最終年度では,スタンダードセルを用いた標準的なCMOSプロセス上におけるハードウェア実装評価を行い,16ビット化した場合でもAESの8ビットS-boxと比べてチップ面積および消費電力の大幅な改善を確認した.加えて,長ビット化することで,暗号解読耐性指標である差分確率と線形確率も,既存手法と比べて大幅に低く抑えられることも確認できた.よって,本研究で提案するS-boxが,従来より用いられるAESのS-boxと比べて高い実装効率と解読耐性を有することを実証した.また,剰余演算が実質不要となる2べき剰余環上で一対一写像となるChebyshev写像から得られる系列の周期について理論解析し,その結果に基づきChebyshev写像を用いた公開鍵暗号が多項式時間で解読できることも示した.
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IEEE Trans. Circuits and Systems II
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1109/TCSII.2016.2531058
Nonlinear Theory and Its Applications (NOLTA), IEICE
巻: 6 ページ: 443--452
10.1587/nolta.6.443