研究課題/領域番号 |
25820168
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
道下 尚文 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 電気情報学群, 講師 (30535357)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メタマテリアル / レドーム / 移動通信基地局用アンテナ / 成形ビーム |
研究概要 |
アンテナを保護するレドーム材料をメタマテリアルレンズに置き換えることでビーム成形や高利得化を簡易な放射器で実現することを目的とし,ビーム成形に必要なレンズ形状と3次元積層誘電体メタマテリアル構造の基礎検討を行った. 現在の基地局アンテナはリニアアレーによりビームが成形され,レドームにより保護される.本研究では,単一の放射器と負屈折率メタマテリアルレンズの組み合わせによる成形ビームの可能性について検討した.2GHzにおいてアンテナ長を1.5mとし,屈折率が+10~-10の範囲で変化したときのレンズ形状を求めた.負屈折率レンズでは,正屈折率レンズと異なり,屈折率の絶対値が小さくなると,レンズ厚は薄くなることが分かった.レンズ最小半径は屈折率-2のとき35cmとなることを明らかにした. 次に,3次元積層誘電体メタマテリアル構造を安価で実現するために,カットオフ導波管と積層セラミックコンデンサ(MLCC)の組み合わせによるメタマテリアル構造を提案した.MLCCの構造パラメータにより実効比透磁率が負となる周波数を調整できることを明らかにした.また,MLCCの内部電極枚数を増加させることで,左手系メタマテリアルとしての動作周波数を低周波化でき,更なる小形化設計が可能であることが分かった.具体的には1GHzにおいて,10~80pF程度のキャパシタンス値を有するMLCCを,単位セルサイズが3mm×3mm×6mmのカットオフ導波管内に配置すると,左手系メタマテリアルとして動作する周波数帯は1.5GHz~2.7GHzとなることが分かった.最低動作周波数の1.575GHzにおいて単位セルは約1/32波長となり,小形アンテナ用の高透磁率材料としての利用も可能となることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画の通り,正負の屈折率媒質のレンズ形状の違いと,積層セラミックコンデンサメタマテリアル(MLCC)の動作帯域について明らかにした.さらに,MLCCの内部電極構造に着目し,その影響を調べた結果,従来は1/7波長程度であった単位セル構造を1/32波長まで小形化できることを明らかにした.その結果,本提案構造はレドームのみならず小形アンテナの支持材としても利用可能であることを明らかにしたため,当初の計画以上の成果が得られたと考える.
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今後の研究の推進方策 |
レンズ最小半径を現在の35cmからさらに細径化するために,アンテナ長1.5mを複数のブロックとすることを考える.波源を実際のダイポールアンテナとし,電磁界シミュレーションによりアンテナの動作帯域,ビーム成形性能,利得の関係をまとめる.また,垂直・水平面パターンの高度なビーム成形を達成するために必要な屈折率分布を求める.以上の検討で得られた屈折率分布を実現する3次元積層誘電体メタマテリアル構造を試作し,解析結果の妥当性を示す.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画にしたがって,積層セラミックコンデンサの構造パラメータと左手系帯域の関係を調べたが,動作周波数の決定要因を明らかにすることを優先したため,実際の構造の試作を行わなかったためである. 損失評価用回路試作を行わなかったが,より詳細なシミュレーション結果が得られたため,次年度は実際のレドーム形状を模擬した3次元積層誘電体メタマテリアル構造の試作費として使用する計画である.
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