研究課題/領域番号 |
25820178
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大木 健太郎 京都大学, 情報学研究科, 助教 (40639233)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 量子状態推定 / 量子通信 |
研究実績の概要 |
平成26年度は,(1)複数の量子系を結合したときの量子相関の生成について,情報量の観点から調べた.また,(2)量子系に対して最小二乗法に基づいた過去の状態の動的推定法を導いた. (1)量子情報処理では,ネットワーク化したシステムにおいて量子相関をどのように作るかが問題であり,相関は情報の移動を伴って生成される.本研究では,移動情報量と呼ばれる指標を用いて,複数の量子系が与えられたときに相関が得られるための条件を数値的に検証した.その結果,移動情報量の値がある範囲内に収まる場合,2つの線形量子系に量子相関が生じることがわかった.これは,量子系をネットワーク化する際に情報伝達を行う通信路をどのように設計すべきかの指針を与えるものであり,量子相関の生成しやすい通信路の指針を与えるものである.移動情報量とは,量子情報理論に基づくものではないが,量子相関生成のためにどのようなネットワーク構造が必要であるかの指針を与えるものであることも分かった.今後は解析的な研究成果を挙げるつもりである. (2)量子系では過去の状態推定には物理的に意味がないとされているが,統計学的な意味づけは可能であり,最小二乗法に基づいた動的推定器の構成法を示した.これは当初の研究計画では挙げていなかったが,ネットワーク化された量子系では情報の遅延が生じるため,観測して得られた情報から過去の状態を推定することが必要になる.本研究では,最小二乗法に基づく結果を示し,量子系に対しても矛盾なく過去の状態推定器が構成できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)ネットワーク構造と量子系の相関生成について,複数の量子系への拡張が遅れている.これは,移動情報量と呼ばれる概念を量子系へ拡張しきれなかったことが原因である. (2)平成25年度に行った量子通信を用いた量子フィードバック制御について,量子通信における符号化,復号化の調査も十分行えていない.符号理論の多くの場合,離散状態の符号化が主であるが,本研究では連続状態を研究対象にしているため,量子通信理論で得られている多くの結果を用いるには,連続状態の離散化が必要である.連続状態の離散化について,進めていく.
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今後の研究の推進方策 |
移動情報量の量子系への自然な拡張を研究し,量子相関生成しやすい通信路の設計に関して,進めていく予定である. また,量子通信を用いた場合のネットワーク化制御性能について,状態の離散化も考慮した符号化・復号化を用いて古典系,量子系の両方の場合で研究を進めていく.とくに安定性の変化がどのようになるか調べ,安定化に必要な通信容量を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
学術雑誌投稿が遅れ,投稿料の分が浮いてしまったため.
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次年度使用額の使用計画 |
学術雑誌投稿料として用いる.
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