研究課題/領域番号 |
25820181
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金澤 尚史 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (90452416)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | システム工学 / 制御工学 |
研究概要 |
本研究は,統制者(制御器)がエージェント集団(制御対象)の状態を直接観測することは出来ず,ある観測(出力)関数を通して限定的な情報しか得られない状況で制御する問題をゲームとしてモデル化し,その性質を明らかにすることを目的とする. 本年度は,取り得る戦略は同じであるが,異なる価値観を持つ複数のエージェント集団において,各エージェントが属する集団に関わりなくランダムに選ばれたエージェントと繰り返しゲームを行う状況を考えた.この集団に対して,補助金を用いてエージェント集団を制御しようとする統制者を導入し制御する状況の進化ゲームモデルを提案した.このモデルでは,各集団の戦略分布を並べたベクトルを状態変数とし,全集団の戦略分布を出力変数として,各集団の戦略分布の変化を表すレプリケータダイナミクスを状態方程式として定式化した.統制者は各エージェントの属する集団を区別することはできないため,各集団の戦略分布(状態)を直接知ることはできず,エージェント集団全体の戦略分布(出力)のみ知ることができる.統制者は,元のシステムの平衡点の中から目標状態を選択し,各戦略をとるエージェントに対して目標状態に依存した補助金を交付する.このとき,目標状態を漸近安定化するのに必要な補助金の条件を明らかにした. また,複数の利己的なエージェントが共同利用するサーバのリソース配分の公平化について考えた.リソース配分を公平化するためには,配分されたリソース量とそれによって実現されるサービスの質との関係を,統制者が知る必要がある.エージェントが真の申告と虚偽の申告を含む確率的な申告を行い,試行錯誤的にその確率を変更する場合を考え,虚偽の申告に対してペナルティを科すことで,エージェントが利己的に振る舞ったとしても公平なリソース配分を実現する制御法を提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,各エージェントの属する集団が区別できない場合の相互作用の,各集団の戦略分布を状態変数とし,エージェント集団全体の戦略分布を出力変数とした進化ゲームモデルの構築とその補助金による制御法の提案を行った.また,目標状態を元のシステムの平衡点の安定化条件を明らかにできた点で,「研究実施計画」に記載した本年度の研究計画について,おおむね順調に進展したと言える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,各エージェントの属する集団が区別できない場合の補助金による利得操作を課したレプリケータダイナミクスにおいて,目標状態が元のシステムの平衡点の場合の安定化条件を明らかにした.しかしながら,提案手法では安定化できない場合があることがわかった.また,目標状態が元のシステムの平衡点とならない場合や,目標状態が未知の場合などに適用できない.したがって,このような場合について適用可能となるよう提案手法を拡張することを考える.また本年度からは,提案した補助金による利得操作を課したレプリケータダイナミクスを,価値観が異なる利己的なユーザが共存する工学システムの解析と制御に応用することを考える. 一方,複数の利己的なエージェントが共同利用するサーバのリソース配分の公平化を考える.本年度提案した手法では,各エージェントに,個人情報である,配分されたリソース量とそれによって実現されるサービスの質との関係を関数として申告させ,虚偽に対してペナルティを課すことで公平なリソース配分を実現する.しかしながら,リソースとサービスの質の関係を関数として申告させることは現実的ではない.そのため,リソースに価格を設定し,リソース要求に応じて配分と支払いを決定する方法でリソースを公平に配分する手法について検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果を英語論文として投稿するために英語論文の校閲を行うための予算を計上していたが,当初予定していなかった,費用無しで校閲を受ける機会があったため,当初予定に対して残額が発生した. 生じた次年度使用額は,当初から研究成果の発表のための費用として計上していたため,学会の参加費と出張費に使用する予定である.
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