分散値が既知の確率的ノイズを受ける伝送路を介した制御について考え、分散値に基づくSN比とレギュレーション性能の間の関係について調べた。前年度の研究では、有界振幅ノイズを受ける伝送路を介した制御について考え、制御系の安定化に必要な最大振幅値に基づくSN比を最小化する問題に取り組み、状態推定機構であるオブザーバを信号の送受信用に複数組み合わせることで最適な制御則を構築した。この制御則は、制御対象の安定化、すなわち制御対象の内部状態の平衡点近傍への収束を理論的に保証する。本結果に基づき、制御則をいくつかの数値例に適用して応答のシミュレーションを行ったところ、ノイズの振幅が各時刻で限界値をとる厳しい状況下においては、安定性の規範のみでは評価できない過渡的な制御性能が悪くなる例も見られた。したがって、内部状態の平衡点への収束速度が遅くなる状況も想定される。このことから、収束過程の過渡的なレギュレーション性能を評価して、良好な制御則を構築するとともに、SN比とのトレードオフの関係を調べることの重要性が明らかになった。こうした課題への取り組みとして、分散値が既知の確率的ノイズの下で制御性能について調べた。具体的には、伝送ゲインを時間に応じて指数的に変化させる制御則について、SN比と制御性能の間の関係を解析した。さらに、性能向上を目的として、オブザーバを利用した信号伝送に基づく制御則について、SN比と制御性能の関係を行列差分方程式の解を用いて理論的に記述することで定量化を行った。また、数値的な検証においては、安定化との関係として、制御性能への要求レベルを下げていくと要求されるSN比の値がガウス性ノイズを介した安定化に必要なSN比の限界値として知られる制御対象の不安定極の絶対値の自乗値に近づいていく現象が観察された。制御則の有効性は、構築したUAV制御系でも実験的に検証していく予定である。
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