研究課題/領域番号 |
25820193
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
合田 寛基 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20346860)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ASR / 経時性 / 3次元 / 応力解放 |
研究概要 |
膨張材を使用したコンクリートを用いて予備試験を実施し,棒形スキャナによる削孔手法とスキャン方法について妥当性を確認した後,反応性骨材を使用したコンクリート供試体を作製し,屋外曝露,促進養生を行いながら,膨張の経過にともなう3次元的な膨張挙動の計測を実施している(テーマ1). この結果より,コンクリートかぶり周辺では,初期に局所的な収縮減少がみられた.一方,かぶり内側(表面から50mm程度より内側)では,4週目以降から,内部→外部方向に向けた膨張が生じている.それにともない,かぶり外部において,外周方向にむけた膨張がみられた.なお,削孔面の骨材が顕著に膨張している様子は確認できていない.以上より,かぶり外側では,乾燥と溶脱が生じているとみられ,自らは膨張していない現象をとらえられている.一方,内部では,方向性を持った膨張挙動が確認されている.表面膨張量が500×10E-6程度では全体的に膨張量が小さいため,応力解放に関しては,信頼性の高いデータが得られておらず,養生期間を長くして,経過観察した後に,応力解放を実施することが必要である. 油圧式クランプの適用性に関する検討(テーマ2)では,当初の想定以上に油圧調整が困難であることが判明した.健全部に対して削孔した直後は,比較的安定した油圧を担保できていたが,こひび割れ発生とともに,供試体に付与すべき油圧の設定ならびに持続的に安定した油圧供給が困難となり,削孔箇所をほかのコンクリート部と同程度の内圧で保持することが不可能となっている.さらに,クランプ本体ならびにジョイントでの不具合が重なっており,改善を要することが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の研究に関しては,テーマ1にて概ね計画通りの成果を挙げることができている.特に,膨張性材料による予備実験については,実験をほぼ完了している.一方,反応性骨材を用いたコンクリートの膨張試験では,反応による膨張促進について時間を要する研究であることから,引き続き計測を重ね,ひずみエネルギーに基づいたASRの膨張特性(テーマ3)についてのデータを収集する. テーマ2については,油圧クランプの不安定性が確認されたことから,実験方法の見直しを実施しており,当初の予定と比較して成果を上げるために時間を要している.クランプの代用として,テフロンシートと鋼管の使用を検討中である.
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今後の研究の推進方策 |
テーマ1については,小型供試体の計測と合わせて大型供試体の作製にも取り掛かることとする.特に,急速膨張型の反応性骨材を対象とした研究を進めていたが,遅延膨張性骨材についても検討することが重要と考えており,骨材種を変え,膨張速度の異なる供試体を対象に実験を進める. テーマ2に関しては,油圧クランプに代わり,薄肉鋼管にテフロンシートを2層巻きし,内部に収縮低減剤を充填することで安定した高速効果を得られるものと考え,適用性の確認を行ったうえで,空間的な膨張挙動の計測を行う. ひずみエネルギー理論を用いたASR膨張の検討については,テーマ1ならびにテーマ2のデータを参照することから,収集データをもとに算定方法の妥当性を確認する. また,コンクリートの挙動変化と並行して,コンクリートを対象とした化学成分分析ならびに顕微鏡観察を実施して,挙動の裏付けとなる化学的な反応の進行状況についても確認する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に購入予定であった油圧クランプについては,試行中に不具合ならびに不適用性が確認されたことから,購入を見送った.また,同機器の付属品等についても購入を見送ったことから,使用額に変更か生じている. クランプについて購入を見送った代わりに,代用消耗品として鋼管やテフロンシートなどを購入する.さらに棒形スキャナの計測精度向上を図るために,端部にブレ防止のガイドなどを購入し,装着する. また,新たに遅延性の反応性骨材を使用する予定としており,購入予定である.
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