研究課題/領域番号 |
25820195
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
大野 健太郎 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (80571918)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コンクリート / 破壊エネルギー / 寸法依存性 / アコースティック・エミッション法 / 骨材最大寸法 / 切欠き高さ / 破壊進行領域 |
研究実績の概要 |
コンクリートの破壊エネルギーは,切欠き高さを変えた場合には,同一配合のコンクリートであっても得られる破壊エネルギーは異なり,寸法依存性を有する.本研究では,断面欠損率(切欠き高さ/供試体高さ)と骨材最大寸法をパラメータとして,コンクリートの破壊エネルギー試験を実施し,断面欠損率が破壊エネルギーに及ぼす影響を各荷重段階で把握することを目的とした. 実験に用いた供試体は,水セメントを40%として,コンクリートの骨材最大寸法を5,10,20mmに変化させて作製した.また,切欠き高さを30,40,50,60,70,80mmに設定した.破壊エネルギー試験時には,アコースティック・エミッション法(AE法)を適用した.実験により得られた荷重-変位関係において,載荷前から最大荷重まで,最大荷重後は最大荷重を20%刻みに分割し,各荷重段階での外力仕事およびAE源発生領域を算出した.その結果,載荷前から最大荷重まで,最大荷重の80-60%,60%-40%,40-20%,20-0%の各区間での外力仕事は,いずれの骨材最大寸法,断面欠損率においても同程度であった。一方,最大荷重から最大荷重の80%の区間では,全ての骨材最大寸法において,断面欠損率の増加に伴い,外力仕事が減少することが認められた。また,AE発生源分布に着目すると,最大荷重までは全ての骨材最大寸法および断面欠損率において,供試体高さ方向に同程度の領域が破壊されているのに対し,最大荷重から最大荷重の80%の区間では,断面欠損率の増加に伴い破壊進行領域高さの変化量が低下する傾向が確認された。このことから,破壊エネルギー試験では,最大荷重時において,断面欠損率に応じたエネルギーが消費されず,最大荷重直後の区間で断面欠損率に応じたひび割れの安定成長過程に変化することで,この区間において外力仕事が断面欠損率の増加に伴い減少する可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の当初計画は,水セメントを60%に固定し,3種類の骨材最大寸法に7種類の切欠き高さをパラメータとした供試体を作製し,破壊エネルギー試験を実施するものであった.しかし,平成26年度の実験結果から,最大荷重までの外力仕事は骨材最大寸法および切欠き高さによらず一定値であるという当初では想定していなかった結果や課題が見つかった.これらを踏まえ,平成27年度はこれまでに実験した過去2カ年のデータを再度見直し,より詳細なデータ整理を行った.その結果,平成26年度に課題とした項目をある程度解決できたと考えられる. したがって,当初の計画とはやや異なるが,新しい知見が得られたことから順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に得られた知見,成果を学会および論文等で発表する. 実験においては,平成25年度および平成26年度において,水セメント比を40,50%として供試体を作製した.本年度は,水セメント比を60%とした供試体を作製し,破壊エネルギー試験を実施する.さらに,引張軟化曲線の導出方法について見直し,数値解析を援用しながら破壊エネルギーの寸法依存性に関する検討を引き続き実施する.
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