研究課題/領域番号 |
25820197
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
伊藤 睦 中部大学, 工学部, 准教授 (00345927)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 若材齢コンクリート / 時間依存型構造解析手法 / 付着応力-すべり関係 |
研究概要 |
本研究では,これまでに開発した時間依存型構造解析手法を高精度化するために,硬化過程のコンクリートと異形鉄筋間の付着応力-すべり関係の材齢変化に関する知見を得るための実験および若材齢鉄筋コンクリートはり部材の曲げ挙動特性に関する実験を実施した。 温度応力により発生するひび割れおよびひび割れ幅予測の高精度化には,材齢変化に伴う若材齢時コンクリートと鉄筋間の付着応力-すべり関係の把握が必要となる。そこで,軟化域に至るまでの付着応力-すべり関係の材齢による形状変化を評価するために,載荷材齢を変化させた両引き試験を行った。その結果,各材齢の付着強度は,各材齢の圧縮強度と相関がある一方で,各材齢の付着強度時のすべり量は相関が無いこと,材齢1週間程度までの無次元化した付着応力-すべり関係の形状はほぼ同一であるが,材齢1ヶ月での形状とは異なることなどの知見を得た。 温度応力や乾燥収縮によるにひび割れ幅の評価を可能とする解析ツールにおける構成則の更なる高精度化に資するために,若材齢コンクリートはり部材の載荷実験を行った。本研究では,若材齢コンクリートはり部材内の鉄筋とコンクリート間の付着特性,材齢極初期に荷重作用を受けたはり部材の硬化後の挙動および材齢極初期にひび割れ損傷を有するはり部材のクリープ挙動に関する知見を得ることを目的とした。実験の結果,計算上過鉄筋断面であっても曲げ降伏すること,材齢極初期の荷重作用が硬化後の曲げ耐力に大きな影響を及ぼさないこと,短期的なクリープ挙動が外気の湿度変化に影響を受けるなどの知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
載荷材齢を変化させた両引き試験を実施することで,軟化領域も含めて,若材齢から硬化までに至る付着挙動特性の時間的変化に関する知見を得ることができた。ここでは,別途実施する圧縮試験結果を使用して,若材齢時から硬化に至るまでのコンクリートの強度発現状況と,付着強度,初期剛性ならびに軟化勾配との関係をまとめることができた。しかしながら,付着応力-すべり関係における付着強度時のすべり量の材齢変化に関する実験データが十分に得られなかったため,今後追加実験を実施したい。 載荷材齢と載荷履歴を実験変数としたRCはり部材の載荷実験を通じて,載荷材齢や載荷履歴がはり部材の荷重-変位関係に及ぼす影響および鉄筋とコンクリート間の付着状況など内部挙動に関する知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
付着応力-すべり関係における付着強度時のすべり量の材齢変化に関する実験データが十分に得られなかったため,追加実験を実施する。加えて,コンクリート乾燥収縮の付着挙動特性に関する知見を得ることも目的として,新たな実験を実施する。また,RCはり部材の載荷実験においても,より長期間の持続荷重を作用させる実験を実施することで,載荷材齢,周囲環境の変化がクリープ挙動に及ぼす影響に関する知見を得ることを目的とする。 これまでに得られた知見を基に,硬化過程のコンクリートと鉄筋間の付着応力-すべり関係のモデル化およびプログラミングを実施する。構築した解析ツールを用いて,本研究で実施しているRCはり部材の載荷実験の数値解析を実施することで,解析手法の妥当性および改良点の検討を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験装置の改良が当初の見積額よりも安く実施することができた。この他,参加する学会が近隣で開催されたこと,謝金を支払う必要が無かったことから,次年度使用額が生じた。また,今年度実施した実験を通じて,本研究の目的を達成するためには,コンクリートの乾燥収縮が付着挙動に及ぼす影響を評価する必要性が出たこと,追加実験を実施する必要が生じたことから,これらの実験を遂行する予算として次年度に使用することとした。 追加実験を実施するための費用および数値解析用コンピュータの購入費用として使用する。
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