研究課題/領域番号 |
25820200
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山本 亨輔 筑波大学, システム情報系, 助教 (80635392)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 構造ヘルスモニタリング / 橋梁損傷 / 車両振動 / 統計的分析 / モード形状 / 特異値分解 |
研究概要 |
本研究目的は、走行車両の加速度応答から推定した橋梁モード形状に基づき、橋梁損傷の有無を判断することである。平成25年度は、数値計算、模型実験および損傷橋梁上の実車走行実験のデータ分析により、本手法について大きく2つの新たな知見を得た。①「本手法の適用により、システム非線形性を補正することが可能である。得られるモード形状に関する指標は、損傷前後で有意な差を持ち、損傷検知に有効である。」②「ただし、路面凹凸および車両そのものの振動による影響が含まれるため、推定モード形状は正解値とは異なる値を示す。」このため、本手法を適用するには、橋梁の健全時と損傷時で、全く同じ条件での計測が要求される。しかし、実用化にあたっては、このような条件は非現実的である。そこで、繰り返し走行可能な模型車両を用いた実験により、車両走行速度をわずかに変化させながら、推定モード形状の統計データを収集し、損傷前後での有意差を検知可能な範囲を調べた。結果、ある程度、走行速度がばらつく状態でも、推定橋梁モード形状は有意に変化し、損傷検知への適用性が認められることが示された。また、これらの統計データの分析により、空間補正手法のメカニズム解明が進展した。具体的には、モード解析理論における基準座標が、損傷前後での変化を数学的な制約のために推定値に含めることができず、その分の誤差が推定モード形状に影響を与えるため、モード形状の正解値がほとんど変化していない場合でも、推定モード形状が変化する可能性が示された。もし、非常に大きな損傷が発生した場合は、基準座標の損傷変化に対する数学的制約は弱まる。したがって、本仮説によれば、推定モード形状の変化が小さくなると考えられるが、分析結果は矛盾していないことも確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で掲げたミッション(①網羅的パラメータ分析、②最適車両の選定、③統計的分析、④実車データの分析、⑤損傷位置推定)のうち、①~④の3つを順調に達成した。また、車両の加速度応答データを相当量蓄積することが出来、今後の研究の発展も見込まれる。本手法のさらなる高度化とメカニズム解明を期待している。ただし、⑤の損傷位置推定は、予備検討結果より、困難が予想される。したがって、区分(2)の「おおむね順調に進展している」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
残された「損傷位置推定」という課題については、ウェーブレット変換などの技術を応用して、平成26年度中にいくつかのアイデアを検討する予定である。一方、本手法の研究成果を学会等で報告したところ、健全時データが必要な点が短所として繰り返し指摘を受けた。この課題についても何らかの方策を示したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度中に必要な機材を借り受けることができたため。 これまでに得られた分析結果および反省点に基づいて、自前での実験機材を購入する予定である。
|