研究課題/領域番号 |
25820203
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
西尾 真由子 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 准教授 (00586795)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 振動解析 / 不確定性 / ベイズ推定 / 振動特性同定 / 加振実験 / 既存橋梁 |
研究概要 |
本研究は,既存構造物の動的数値解析におけるモデルパラメータの不確定性を,計測データからベイズ推定によって定量化し,それに基づき妥当なモデルへのキャリブレーションを行う手法を確立し,既存橋梁の耐震補強設計に用いる動的解析モデルの妥当性保障法へと発展させることが目的である. 平成25年度は,主に(a) ベイズ推定における事前分布の設定方法と事後分布推定結果への影響の解明,(b) 実環境下で実構造物からのデータ取得方法と事後分布推定結果への影響の解明,に取り組んだ.尚、本研究では,代表者の所属機関にある橋梁を主な対象として用い,その計測データと数値モデルに対して,検証を遂行している. (a)において,事前分布の設定が事後分布に影響を与えることは,ベイズ推定を用いる問題で一般的に知られているが,既存構造物では特に,経年変化の不確定性を定量的に把握することが難しい.このような不確定性をもつ材料定数や境界条件のパラメータの事前分布が事後分布にどのように影響するか,一様確率分布の範囲の影響,正規分布と一様分布といった分布形状の影響について,明らかにした.前者に関して得られた知見は,投稿論文にまとめることができた.さらにこれに加えて,既存構造物の耐震補強設計で実際に用いられる骨組みモデルと,より詳細なシェル要素モデルで,不確定モデルパラメータの取り扱いと事前分布設定方法を考察した. (b)では,有意な事後分布を得るための観測データ取得方法について検討するため,加振実験でのセンサ配置や加振位置,振動特性の同定精度の違いが事後分布に与える影響を検証した.ここでは,観測データのばらつきと初期モデルに与えられる事前分布に起因するばらつきの関係によって,推定される事後分布の有意性が説明できる可能性を示すことができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的としていた,平成25年度の検証項目(a)(b)は8-9割は進んでおり,一通りの成果としてまとめることができるものとなっていると考えており、投稿論文や学会発表などの準備にも取り掛かれている.また新たに,キャリブレーションを行うモデル構築方法の影響,すなわち解析の目的によって骨組みモデルや詳細モデルと異なることの影響が,不確定モデルパラメータの取り扱いと事後分布推定結果に深く関わることにも言及することができ,次年度以降の展開に向けた知見を得ることができた.
|
今後の研究の推進方策 |
概ね予定通りに進捗しているため,当初の目標通りに平成26年度も研究を遂行する. 平成26年度からは,25年度に行った検証・考察を引き続き進めながら、(c) 不確定パラメータの評価に用いる特徴量の選定方法に関する検討,に着手する.本研究のモデルキャリブレーションは,既存橋梁の動的耐震設計で行われる時刻歴応答解析に用いるモデルへの展開を考えている.本検証では主に,これまでの振動特性(固有振動数など)だけでは考慮できない、時刻歴応答解析で加わる新たな不確定パラメータ:減衰や構造/材料非線形性に対して,モデル出力と計測データの比較に用いることができる特徴量を検討する. 検証では始めに,支承部に摩擦調整機構と衝突機構を備え,減衰・非線形性をある程度コントロールできる梁供試体を用い,その振動台実験で得られる加速度データを用いて検証を行う.同時に,対象としている大学内の橋梁についても,H23年度に耐震補強工事が行われておりその記録を参照しながら,実際の時刻歴応答解析における不確定パラメータの取り扱いを検証する.尚,H25年度中には対象橋梁の時刻歴応答解析モデルの構築を既に行ってあるため,検証にすぐに取り掛かれる状態である.また実験室での検証に用いる梁供試体の準備にも着手している. 以上の通り研究を進めることで,本研究の目標である,既存橋梁のモデル化における妥当性保障法の確立を引き続き目指す.
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初計画していた大型の振動加振器の購入をしなくても,別の方法で試した実橋梁での加振実験で有意なデータ取得を行うことができ目的の検証を行うことができたことが主な理由であり,本研究で必要となったその他の物品(実験用PCや解析ソフト、実験に用いる消耗品等)を購入した. 一方で,26年度に予定する梁模型での実験では,改造する支承部材を精緻に作り込む必要があること,また新たにセンサを購入する必要性なども考えられており,次年度使用で有意義に使用することとした. 次年度は,代表者が所有する現存の梁模型に対して,支承部に摩擦調整機構と衝突機構を備えたものへと改造するための費用,および梁模型に適した加速度計の購入費用を中心として研究費の使用を行う.また国際会議にも採択が決まっているため,旅費の支出も含まれる.
|