研究課題
本研究は,既存構造物の動的数値解析におけるモデルパラメータの不確定性をベイズ事後分布推定によって定量化し,既存橋梁の諸問題を検討する数値モデルの妥当性保障法へと発展させることが目的である.平成27年度では,(I) 特に耐震設計を念頭においてモデル化の違いが与える事後分布推定結果への影響を検証したこと,そしてさらに,(II) 事後分布を既存橋梁の信頼性評価に用いることの有効性を示したこと,この2つが主な成果であり,それぞれで成果発表にもつなげることができた.具体的に(I)では,実際に耐震補強工事が行われた実橋梁を対象に検証を行い,振動データ取得を行った後,耐震設計で用いられた梁モデルと,設計図面に基づく詳細モデルに対して,事後分布推定を行い比較した.それぞれのモデル化で,事前分布を不確定性の伝播を考慮して適切に設定することで,梁モデルと詳細モデルで整合性のある事後分布推定結果が得られることを示した.本研究課題の計画で示した耐震設計への展開について,結果を得ることができたといえる.さらに(II)では,推定した事後分布を既存橋梁の性能評価に用いる,本研究の手法の明確なアプリケーションを示す発展的な成果を得ることができた.ここでも実橋梁を対象に,定期点検データに基づき設定した支承および床版のパラメータ事前分布に対して,振動データからベイズ事後分布推定を行い,実際の桁腐食状態に対応する事後分布が得られた.その上で,設計活荷重で鋼主桁端部に生じる最大応力に対する降伏耐力を信頼性指標により評価した.最大応力分布導出に事前分布と事後分布を用いた場合での比較を行い,事後分布を用いることで過度に危険側に偏らない信頼性指標βが得られた.以上のように27年度の成果では,ベイズ事後分布推定が既存橋梁の諸問題に取り組む上で非常に有用であることを示し,本研究課題の最終年度としてまとまった結論が得られた.
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土木学会論文集A2
巻: 71 ページ: I_99-I_108
http://dx.doi.org/10.2208/jscejam.71.I_99