研究課題/領域番号 |
25820205
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
上田 尚史 関西大学, 環境都市工学部, 助教 (20422785)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 繊維補強コンクリート / せん断応力伝達モデル / せん断耐力評価 / 材料構成則 / 超高強度繊維補強セメント系複合材料 / ひずみ硬化型セメント複合材料 |
研究実績の概要 |
H25年度に続き、繊維補強コンクリート(FRC)の材料構成則の検討を行うとともに、種々のFRC部材のせん断破壊挙動について検討を行った。 材料構成則の検討においては、H25年度の研究成果であるせん断応力伝達モデルを、種々の繊維補強コンクリートへ適用することを試みた。普通強度のコンクリートおよびモルタルに鋼繊維またはPVA短繊維を混入したFRCに対して、パラメータ解析を行うことでせん断伝達モデルの特性の把握とモデルの高度化を行った。また、提案したモデルをせん断破壊する部材へ適用し、モデルの適用性とFRC部材のせん断挙動についての検討を行った。その結果、今回対象としたFRCにおいては、必ずしも繊維の架橋効果はせん断伝達挙動に影響を及ぼさない可能性が示唆された。せん断応力伝達モデルの妥当性を明確にすることも含めて、より詳細な検討を進める予定である。また、ひび割れ面のずれ挙動を評価可能な実験装置を開発し、各種FRCのせん断応力伝達挙動の検討を可能とした。 種々のFRC部材のせん断破壊挙動の検討については、超高強度材料とひずみ硬化型材料を用いた検討を行った。 超高強度材料を用いた検討では、圧縮強度が150MPa以上の超高強度繊維補強セメント系複合材料を開発し、部材のせん断挙動の評価を行った。その結果、繊維を2.0%程度混入すれば、せん断破壊は生じないことを確認した。 ひずみ硬化型材料を用いた検討では、直接一軸引張試験において平均ひずみ2%程度までの引張性能を有する材料を開発するとともに、当該材料に粗骨材を体積混入率で5~20%混入することで、せん断伝達挙動の改善を試みた。部材のせん断挙動の評価を行った結果、粗骨材を10%程度混入することにより、材料の引張性能は低下するももの、部材としてのせん断耐力は同程度以上となることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、繊維補強コンクリート(FRC)を構造部材ならびに補強材として利用する際の合理的な設計に資する設計法を提案することにある。その目的を達するためとして、材料の力学特性と部材の力学性能の関係性を明確にすること、繊維補強コンクリートの材料構成則を提案すること、ならびに破壊メカニズムを考慮した設計法を提案することを行ってきた。 このうち、材料構成則については、現在実験結果との比較を通して、妥当性評価とモデルの精度向上を行っているところである。また、種々のFRCを対象として、材料の力学特性と部材の力学性能の関係性の把握を行った結果、部材のせん断挙動は材料の引張性能とともにひび割れ面のせん断伝達特性に影響を受けること等を明らかにした。H26年度はこれらの知見を考慮して、FRC部材の設計法を提案していく予定であったが、未だ設計法の提案には至っていない。一方、H26年度に実施予定であった補強材としての利用を視野に入れた検討については、解析的な検討を進めているものの、実験的な検討については未着手である。 以上のことから、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
種々の繊維補強コンクリートを対象とした1面せん断試験との比較を通して、材料構成則の妥当性確認とモデルの高度化を行う。また、その材料構成則を有限要素解析に適用し、種々のFRCの部材挙動を解析的に評価するとともに、解析から得られた種々の力学情報(応力やひずみ)を基に、せん断耐力評価法を検討する。 また、補強材としての利用を視野に入れた検討として、補強に最適な力学特性を有する材料の提案を、解析と実験の両面からの検討により行う予定である。
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