近年開発された橋梁用の新しい高性能鋼材であるSBHS鋼は従来鋼に較べ降伏強度が高く,これまでSM570材やHT鋼などの高強度鋼で必要とされた溶接時の余熱管理が不要で曲げじん性に富むという特徴がある.本鋼材の代表的な適用例として,東京港臨海大橋の施工実績が挙げられる.しかし塑性域での性能が明らかにされていないため弾性範囲の使用にとどまっているものが現状である.耐震設計においては部材の塑性化を許容することで,従来の弾性設計に較べてより合理的な設計に発展できる可能性があり,SBHS鋼の適用範囲が拡大することが期待される.また極大地震等の想定外の外力に対してその損傷特性を把握しておくことは重要である.本研究では,SBHS鋼の塑性領域での繰り返し特性を明らかにするためにSBHS鋼の材料試験を実施し,一軸の応力・ひずみ関係を把握した.材料試験の結果をもとにSBHS鋼の材料構成則を開発し,有限要素解析ソフトABAQUSにユーザーサブルーチンとして導入した.エネルギ吸収部材としての評価を行うために,レベル2地震動に対して従来鋼およびSBHS鋼を用いた柱部材の試設計を行ったところ材料費の観点からSBHS鋼の方が経済的に製作できることがわかった.設計した柱部材を対象に高精度のFE解析を行いその終局挙動特性について比較を行ったところ,エネルギ吸収の観点からSBHS鋼が従来鋼よりも優れていることを確認した.
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