本研究の目的は,フレッシュコンクリートや土石流などの非ニュートン流体の流動解析の数値計算手法を開発することである.これまでの主たる研究成果は以下の通りである.1.流体を含むセルの処理を工夫することにより,計算精度の向上,数値不安定性の改善を行った.計算精度の向上は,セルを細かくしサブセルを用いることにより実現した.また,数値不安定性の改善は,自由表面付近のセルにおける流体の割合の下限値を設定することで,解くべき方程式の条件数を小さくすることが可能となった.2.スランプ試験を元に数値パラメータを同定し,流動性の再現シミュレーションを行った.スランプ試験は,標準的な配合で作成されたフレッシュモルタルやフレッシュコンクリートを用いた.実験と解析を比較した結果,ある程度の再現計算はできたものの,既往の構成関係式では再現できないところもあり,新しいモデル化を導入したほうが良いことが分かった.3.非関連流れ則に従う構成関係式を定式化に組み込んで実装を行った.これまでの定式化と異なり,ひずみ速度が塑性乗数を含む場合の構成関係式を扱えるように拡張した.その結果,流体だけでなく,自由表面を含む砂や土砂の流動性を解析することができるようになった.3.は最終年度の主な成果である.今後の研究の展開として,フレッシュコンクリートの構成関係式を検討,開発することと構造物と連成解析のための数値計算手法の開発を行い,砂と剛体球を用いた実験を行うことがあげられる.
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