研究課題/領域番号 |
25820210
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
玉井 宏樹 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20509632)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 材料劣化 / 鉄筋腐食 / RC部材 / 構造性能 / 載荷速度依存 |
研究概要 |
本課題では,材料劣化したRC部材の構造性能低下に及ぼす載荷速度依存性を実験および解析により解明を試みるものである。また,実際の劣化状況,非破壊検査出力値,RC版部材の残存性能の関係性を明らかにすることも目指している。上述の目的を達成するために,本年度は下記2項目に重点を置き,研究を実施した。 1.材料劣化(鉄筋腐食)したRCはり部材のFEMによるモデリングの検討とそれによる解析:鉄筋をトラス要素,コンクリートをソリッド要素,鉄筋とコンクリート界面はバネ要素で離散化したRCはり部材のFEモデルを基準とし,劣化として鉄筋腐食のモデリングを検討した。鉄筋腐食としては,腐食による鉄筋断面積の減少率,鉄筋の弾性係数と降伏強度の低下率,鉄筋とコンクリートの付着剛性と最大付着力の低下率,かぶりコンクリートの剥落の有無に着目し,それらをパラメータとした多数のモデルを構築し,まずはそれらの曲げ耐荷性能に及ぼす影響を調べたところ,曲げ耐荷性能の低下に主に影響を及ぼしているのは,付着特性とかぶりコンクリートの剥離であることが推察された。より具体的な例として,健全(劣化なし)な場合と比較して,鉄筋断面積減少率が30%で全長に渡り付着も完全に切れてかぶりコンクリートが剥落したモデルでは,荷重-変位関係から得られる曲げ耐力が70%程度に低下することが確認できた。また,衝撃載荷に対しても,最大変位や残留変位が1.5倍程度になることが確認できた。しかし,腐食鉄筋周辺コンクリートの損傷など,次年度により定量的な解析モデルの構築を目指す。 2.材料劣化(鉄筋腐食)したRC部材の構造性能低下による実験的検討:劣化程度の異なるRCはり部材の静的荷重及び衝撃荷重に対する耐荷特性を明らかにするために,電食法により鉄筋腐食させたRCはり供試体の製作を実施した。実験に関しては,次年度が主体となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画では,「材料劣化したRC版部材の構造性能低下に及ぼす載荷速度依存性の影響の検討」と「材料劣化(鉄筋腐食)したRCはり部材のFEMによるモデリングに関する基礎検討」の2項目を実施予定であったが,概ね順調に進んでいるといえる。 しかし,実験に関しては,鉄筋腐食量に着目して劣化程度の異なる供試体を5つの区分に分けて製作することが難しく,供試体製作にかなりの時間を要しており,載荷実験は次年度での実施に変更することとした。今年度内に載荷実験に用いる装置やセンサーなどは全て準備済みであるため,この遅れは次年度すぐに取り戻せるものといえる。一方,解析検討に関しては予定通り順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は下記1),2)を主に実施する予定である。 1)材料劣化したRC版部材の構造性能低下に及ぼす載荷速度依存性の影響の実験検討 劣化レベルに応じて製作されたRC試験体(今年度製作)に対して,現有の万能試験機と落錘式衝撃試験装置を用いて静的から衝撃まで載荷速度の様々異なる載荷実験を実施する。載荷速度は,重錘の落下高さで調整することとする。(静的載荷に関しては,万能試験機を利用する。)なお,載荷に伴う変形・破壊進展の詳細把握のため,鉄筋のひずみやレーザー変位計による変位計測のみではなく,複数台の高速カメラを利用したマルチアングル計測法を適用する。本課題においては,3台の高速カメラを利用し,載荷部近傍と供試体底面の変形過程および破壊進展を1秒間に1000フレームのフレームレートで詳細に撮影し,撮影した高速動画を用いて,試験体のマーカーを追尾し,3次元モーション解析を実施する。また,載荷試験を実施する前に,劣化試験体に対して,自然電位法・分極抵抗法による非破壊検査をそれぞれ実施し,自然電位と分極抵抗を出力値として,劣化レベルに応じて整理する。本項目に関しては遂行上の課題は特にない。(大学院生1名の補助により実施予定) 2)“実際の劣化状況”と“非破壊検査出力値”と“RC版部材の残存性能”の関係性の解明 ここまでの研究成果を整理することで,実際の劣化状況と非破壊検査出力値とRC部材の残存性能の関係性を解明する。具体的には,劣化レベル毎に,非破壊検査出力値から得られる損傷度と,実験・解析から得られる残存性能との関係を明確にし,材料学的観点と力学的観点の双方から劣化によるRC版部材の構造性能低下について検討する。本項目に関しては遂行上の課題は特にない。
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