本課題では,材料劣化したRC部材の構造性能低下に及ぼす載荷速度依存性を実験及び解析により解明を試みるものであり,さらに,実際の劣化状況,非破壊検査出力値,残存性能の関係性を明らかにすることを目指していた。今年度実施した研究成果を以下に記す。 1.鉄筋腐食したRC部材の載荷速度依存性の影響の実験検討:電食法により促進劣化させて鉄筋腐食の状態を再現したRC試験体を劣化程度を変えて複数製作し,それらに対して,静的曲げ載荷試験と落錘式衝撃試験を実施することで,同程度の劣化損傷であっても破壊形態が異なることを明らかにした。具体的には,腐食率が5~10%程度であれば,静的曲げ耐力は約10%程度しか下がらない(ばらつきが大きいため平均的に評価)が,衝撃荷重に対しては,腐食率が大きいほうが顕著に残留変位値が増大し,さらに破壊形態が大きく異なり,さらに,耐繰り返し衝撃試験でみても,腐食率が大きいほうが,終局変位に至るまでの衝突回数が明らかに減少することがわかり,今後,累積入力エネルギー値で余寿命を評価できる可能性を示した。 2.実際の劣化状況,非破壊検査出力値,残存性能の関係性の把握:今回のケースでは,打音検査値と腐食率には明確な関係が得られなかったため,鉄筋腐食のような劣化ケースでは他の非破壊検査の利用を考慮して今後取り組む必要があることがわかった。 3.解析的検討:1の実験を模擬した解析をFEMにより実施し,腐食率と耐力評価の関係を評価可能であることがわかったが,同時に,衝撃荷重載荷時のかぶりコンクリートの剥落など破壊状態を解析で再現するためには今後も検討が必要であることがわかった。
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