研究課題/領域番号 |
25820212
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
中村 大 北見工業大学, 工学部, 准教授 (90301978)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 岩盤 / 岩石 / 岩屑 / 凍上 / 凍結・融解 / 凍結深さ / 温度勾配 |
研究概要 |
研究初年度である平成25年度は,実際の岩盤斜面の温度(凍結深,温度勾配),凍上量を詳細に計測することに取り組んだ.計測候補地点を北見市内で3地点に絞り込み,そのうち1地点,2箇所(2種類の層)において計測を開始した.計測地点の岩質は,軟質で岩屑状態の凝灰岩と砂質凝灰岩である.この岩盤斜面を1.5mボーリングし,凍上量計及び温度計をそれぞれ設置した.また,冬期間の岩盤斜面の様子を観察するため,インターバル撮影が可能なカメラも設置した. 凍上量の計測結果から,凝灰岩の層では凍上が発生し,冬期間の計測で最大1.2mmの凍上量が計測された.一方,砂質凝灰岩の層では凍上による変位が計測されなかった.凍上量そのものは小さかったものの,岩質による凍上量の違いが明らかとなった.また,砂質の岩石で凍上性が小さくなるという傾向は,申請者がこれまでに明らかにしてきた岩石の凍上性に関する成果と良い一致を示した. 温度の計測結果から,実際の岩盤斜面の温度勾配は最大で0.03℃/mmであり,これまで申請者が室内実験を行ってきた温度勾配0.14℃/mmの概ね1/5程度であることが明らかとなった.実際の岩盤斜面の凍上量が小さいのは,この温度勾配の小ささに起因すると考えられる.凍結深(地表面から凍結線までの深さ)は2箇所とも最大で50cm程度であり,凍結線の停滞時間は最大で200時間程度となった. さらに,カメラの撮影画像から,初冬と晩冬に,幾度もの岩石,岩屑の崩落,流動現象を確認することができた.これらの現象が,初冬の寒気の緩みや晩冬の融雪が原因で発生していることも明らかとなった. 初年度の計測で,実際の岩盤斜面の凍上挙動,凍結深等の温度変化を明らかにできたことは大きな成果であり,次年度以降,これらの成果について順次公表していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度は,実際の岩盤斜面の温度(凍結深,温度勾配),凍上量を詳細に計測することを中心に研究を進めた.計測に適した岩盤斜面を北見市内の3地点に絞り込むことができたが,市内のボーリング業者の都合が合わなかったため,ボーリングを行うことができず,実際に計測を開始できた岩盤斜面は1地点のみとなってしまった.当初,2~3地点で計測を行い,それらの地点の比較,評価を行う予定であったため,区分を(3)とした.ただし,計測を開始した1地点で,岩質の異なる2箇所(2種類の層)の温度,凍上量を計測することができており,研究の当初の目的は十分達成できている.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度から開始した実際の岩盤斜面における温度(凍結深,温度勾配),凍上量の計測を引き続き行う.計測地点は1地点増やす予定であり,硬質な岩石からなる岩盤斜面を既に選定済みである. 平成26年度は,上記に加えて,岩盤斜面から採取してきた岩石,岩屑を用いた,室内凍上実験を開始する.これまで,固体の岩石については十数種類の岩石で凍上実験を行い,その凍上性を明らかにしてきたが,岩屑堆積物の凍上実験は初めてであり,軟質な岩屑の凍上性は把握できていないのが現状である.そこで,今年度は岩屑堆積物専用の凍上実験装置を作製する.作製した凍上実験装置で,平成25年度の実際の岩盤斜面の計測から得られた温度勾配及び凍結線の停滞時間で,凍上実験を実施することに取り組む.
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次年度の研究費の使用計画 |
選定した岩盤斜面において,ボーリングを行うことを予定していたものの,ボーリング業者の都合が合わず実施できなかった. 計測地点は初年度から1地点増やす予定であり,硬質な岩石からなる岩盤斜面を既に選定済みである.今年度は,既に,ボーリング業者と打ち合わせを済ませており,年度内に間違いなくボーリングを実施できる予定である.次年度分として請求した助成金は,計測器を埋設するためのボーリング業者を雇用する代金として使用する.
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