平成27年度は,平成25年度から継続している実際の岩盤斜面の凍結深の推移および凍上量の野外計測と,実際の岩盤斜面の凍結速度を模擬した凍上実験や,亀裂およびその亀裂に岩屑が堆積した岩盤を模擬した凍上試験を実施した.さらに,当初計画に加えて,室内実験で岩石の凍上時に発生する吸水圧を計測することにも取り組んだ. 野外計測を実施した岩盤斜面の岩質は,軟質な軽石質凝灰岩と凝灰質砂岩,硬質な玄武岩の3種類である.この岩盤斜面に温度計および凍上量計を設置し,冬期間,除雪を行いながら,凍結深の推移および凍上量の計測することに取り組んだ.計測された最大凍結速度は軟質な岩盤斜面において0.4~0.5 mm/hour,硬質な岩盤斜面において2.4~3.6 mm/hourであった. 次に,3種類の凍結速度で制御した凍上実験を実施した.実験の結果,凍結速度が大きくなるに従って,凍上速度も大きくなることが明らかとなった.加えて,人工的に作成した亀裂やその亀裂に岩屑堆積物を含んだ供試体を用いた凍上試験も実施した.実験の結果,亀裂部分では凍上が発生しやすく,さらにこの亀裂に岩屑堆積物が存在すると厚く発達したアイスレンズが形成されてしまうことが明らかとなった. 以上の研究成果について検討を行った結果,地下水位が岩盤斜面の凍上に与える影響について把握しておくことが重要性であるとの判断に至った.このため,室内実験で岩石の凍上時に発生する吸水圧を計測することにも取り組んだ.この結果,凍上性の高い岩石において最大で水頭5 mに相当する負圧が計測された.一方,非凍上性岩石では全く負圧は発生しないことも明らかとなった. 本研究から得られた様々な成果は,今後,岩質・亀裂・風化を考慮した実岩盤斜面における凍上危険性の評価を作成する際に,非常に有益である.
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