研究課題/領域番号 |
25820225
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
重枝 未玲 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70380730)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 河道の維持管理 / 長期予測 / 準3次元河床・河道変動モデル / 準平面2次元河床変動モデル / 河道分・合流点 |
研究実績の概要 |
本研究は,河道改修後の維持管理シナリオの検討が可能な長期的な河床・河道変動を予測可能な数値モデルの開発を目的としている.当該年度では以下の(1)と(2)を行った. (1)準平面2次元洪水流モデルの構築と準3次元混合砂礫河床・河道変動モデルの底面摩擦の取り扱いの検討 河道全体を対象に,平面2次元モデルのように河道平面形状等の河道特性を考慮でき,1次元モデルのように高い計算効率で洪水予測を行う新たな準平面2次元洪水流モデルを構築した.同モデルでは,(1)河道線形に沿って計算セルを配置し,(2)計算セルをコントロールボリュームとして,①計算セル境界での水位と断面積,潤辺,径深,水路幅,断面積の図心との関係,②計算セル内での水位と体積,粗度係数との関係を求め,(3)①と②の関係から,計算セル境界の法線方向に対して,セル境界の横断面で面積分された数値流束を算定し,(4)全てのセル境界線に対して数値流束を線積分し,計算セル内の体積,流速と体積との積を算定することで,洪水予測を行う.同モデルを圧力・自由表面流混在流れの実験結果や実河川の洪水流に適用した結果,同モデルが水位の経時間変化,水面形,痕跡水位を十分な精度で再現可能であることが確認された.また,準3次元混合砂礫河床・河道変動モデルでは,河床が陸化した場合に数値振動が発生する問題が生じていたが,その要因は,底面摩擦によるエネルギー損失が流れの速度水頭を超えるためであることがわかった. (2)実験データと現地データの収集と河道の経年変化 分,合流部での混合砂礫実験,分合流部での一様砂実験を行い,水位,流速,河床高,分流量・流砂量などのデータを収集・整理した.遠賀川の一次支川である彦山川について,平成24年九州豪雨災害前後の河床・川幅や河床材料のデータを収集,整理し,同河川の河道特性や過去の出水と河道の経年変化との関係について検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では,昨年度に課題が残された準平面2次元河床変動モデル及び準3次元混合砂礫河床・河道変動モデルを構築する予定であった. 準平面2次元河床変動モデルについては,流れを予測する準平面2次元洪水流モデルは構築できたが,プログラム上の問題を解決するのに予想以上の時間を要したため,河床変動モデルの構築までには至らなかった.準3次元混合砂礫河床・河道変動モデルについては,水深が非常に浅くなった場合に,底面摩擦が非常に大きくなるため,基礎方程式の一つであるモーメント方程式で数値振動を引き起こす問題が残っていた.これは,底面摩擦によるエネルギー損失が,流れの持つ速度水頭を超える場合に生じることが確認された.この検討についても予想以上に時間を要した. 一方,実験データの収集は,概ね計画通り実施されており,実河川のデータの収集・整理については,計画より早く実施されている. 以上から,実験データや現地データの収集については概ね計画通り実施されているが,準平面2次元河床変動モデルと準3次元混合砂礫河床・河道変動モデルの開発については,当初の計画に比べ,計画よりやや遅れている.このように,当初の計画に比べ,研究の達成度はやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
準平面2次元河床変動モデルについては,現在,プログラミング中である.また,準3次元混合砂礫河床・河道変動モデルの摩擦損失の取り扱いについては,底面摩擦によるエネルギー損失を速度水頭以下となるように制限することで解決できると考えている.この取り扱いを導入するためには,数値モデルのフレームワークを若干変更する必要があるため,その変更を検討している.いずれも順調にいけば,今年度前半には,両モデルを構築,検証を行える状況にある. 両モデルの検証後,計画通り,両モデルを統合したハイブリットモデルを統合し,実河川へ適用することで,実河川の維持管理のあり方について検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
準3次元混合砂礫河床・河道変動モデルについて学会発表を行う予定であったが,底面粗度の取り扱いの検討に予想以上の時間を要したため,同モデルを改良するには至らなかった.同モデルの発表を次年度に行うこととしたため,次年度の使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額については,準3次元混合砂礫河床・河道変動モデルの構築あるいはその発表の旅費に充てる予定である.
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