研究実績の概要 |
本研究は,河道改修後の維持管理シナリオの検討が可能な長期的な河床・河道変動を予測可能な数値モデルの開発を目的としている.当該年度では以下の(1)と(2)を行った. (1)準平面2次元洪水流モデルと準3次元混合砂礫河床・河道変動モデルの改良 昨年度,河道平面形状等の河道特性を考慮でき,高い計算効率で洪水予測を行う準平面2次元洪水流モデルを構築したが,同モデルを急流河川へ適用した場合に,数値振動が発生し計算の継続が困難であることが確認された.そのため,底面摩擦によるエネルギー損失が流れの運動エネルギーを超えない処理を加えることで,上記の問題を改善した.さらに,同解析結果と1次元および平面2次元解析の計算精度と効率とを比較することで,計算精度は平面2次元,準2次元,1次元解析の順で高いこと,計算効率は1次元,準平面2次元,平面2次元解析の順で高く,準平面2次元解析は,1次元解析に比べ0.43倍程度低速,平面2次元解析に比べ1,200倍程度高速であること,などが確認された.準3次元混合砂礫河床・河道変動モデルについても同様に,底面摩擦による数値振動が発生する問題が生じていた.これについては,準平面2次元解析と同様な処理を行うことで,多大な計算時間が必要となるが,急流河川の山国川での解析が実行可能であること,などが確認された.ただし,同モデルを用いた河床・河道変動解析の実行には,計算効率の向上が不可欠である. (2)平面2次元河床・河道変動モデルの実河川への適用 平面2次元河床・河道変動モデルを,平成24年九州北部豪雨災害時の甚大な被害を受けた彦山川上流に適用した結果,①河床・河道の変動を定性的であるが再現できること,②平成24年九州北部豪雨災害時の彦山川の解析水位を再現できること,などが確認された.さらに,③解析結果と河道の経年変化の併用した被災箇所の推定について,その可能性を示した.
|