研究課題/領域番号 |
25820227
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中條 壮大 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (20590871)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 台風 / 高潮 / 温暖化 |
研究概要 |
台風の発達過程と環境場の関係をモデル化するために、NOAAのIBTrACS熱帯低気圧トラックデータと東北大学の全球高解像度客観解析海面水温データを用いて、各海域の中心気圧とその変化率、SSTの関係を調べた。また、関連する既往研究(例えばKuroda et al., 1998やBaik and Paek, 1998)での結果についてもレビューを進めている。 26年度以降にこれらの関係を実装する確率台風モデルに関しては、主成分分析とクラスター分析を用いた台風特性の変化率に関する結合分布関数の近似方法について再検討した。現段階の確率台風モデルについては土木学会論文集で公表しており、またJournal of Applied Meteorology and Climatologyに再検討したものを投稿し、 現在印刷中である。 現在の九州沿岸における防災計画の状況については、高潮ハザードマップ策定における基礎資料など、熊本県や宇城市のご協力を得て順次取得している。 また、当初の計画では平成26年度に行う予定であったが、高潮リスク評価における基礎的検討として潮汐・高潮・波浪結合モデルSuWATを用いて、特定地域を対象とした高潮災害に対する最悪被害経路の推定を実施している。この結果は海岸工学講演会および土木学会西部支部で発表され、海岸工学論文集にも投稿中である。 最終年度には多数の高潮シミュレーションを実施する必要があるが、このために25年度は計算条件の自動作成アルゴリズムを作成し、計算手順の大幅な効率化と人為的ミスの削減を達成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環境場と台風発達過程の関係については、今年度中に十分検討することができなかった。理由の一つは海水面温度の資料入手に時間がかかったことである。しかし、既往研究の情報収集などにより、次年度には成果が期待される。 確率台風モデルの開発については、2編の論文を投稿しており順調に目的を達成している。 25年度には熊本県と宇城市の協力を得て、実際の台風接近時に必要とされる資料の在り方について学ぶことができた。これは最終年度の成果取りまとめに反映される。 八代湾をケーススタディとして台風のコース、中心気圧変化、進行速度および台風規模の及ぼす影響範囲を推定することができた。これにより、台風の将来変化の推定幅を考慮して、被害の変化幅についても算定できるようになり、現在の高潮に対する減災活動支援にも役立つことが明らかとなった。SuWATの運用に関しては研究協力者の支援により、ほぼシステムの構築が完了し、作業の効率化も達成できた。 全体を通じて、進捗状況が遅れている部分もあるが、その代わりに次年度以降に実施する予定を前倒しで実行している部分もあるために、順調に目標を達成していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
海水面温度と台風の発達過程について調べると同時に、総観気象要因と台風進路の関係についても調査し、確率台風モデルへの導入について検討する。また、最新版のIBTrACSデータを用いて、確率台風モデル内での台風の消滅過程の取り扱いの改良を試みる。こうして温暖化の影響を取り込んだ確率台風モデルの構築された後には、GCMによる近未来の台風予測結果との整合性を確認する。 高潮災害の最悪経路の検討については、別の湾を対象に同様の検討を行う。それと合わせて、台風経路が高潮におよぼす影響について、接近の程度と偏差の予測の確度の変化、すなわち遡及効果を数値計算により検討する。 次年度以降には、各国のGCMによる台風の将来変化の予測結果が順次提供される予定であり、それらの変化傾向を導入した将来の災害傾向の変化についても示す。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では成果発表として国際会議に参加する予定であったが、学内の用務で参加ができなかった。ただし、該当の内容については共著者に発表していただいた。その旅費・参加費と発表用のノートPCの購入を取りやめた分の額が約30万円繰り越されている。 繰り越し金は次年度の成果発表やデータ保存用のネットワークHDDの購入等に使用される予定である。
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