研究を進めた結果、乾燥地での氾濫原・湿地帯に流れ込む流入量に大きなバイアスがあることが明らかになり、当初の研究を実施するためには、乾燥地を含む世界全体の流出量再現性の向上を優先させるべきことが認識された。また、研究を進める途中に、沿岸乾燥地における海水淡水化の重要性が拡大していることも明らかになり、海水淡水化の定量的な推定に関するモデルを開発することで、乾燥地帯におけるH08の水資源評価が改良できることも見込まれた。 そこで、研究目的や内容をやや拡大し、全球水資源モデルH08の世界全体での流出量再現性の向上させること、ならびに、沿岸乾燥地での水資源評価を改良するため、海水淡水化に関するモデルを新たに開発することを目的として研究を実施した。 流出量再現性の向上に関しては、これまでの特定流域への適用事例での知見をもとに自動化アルゴリズムを構築し、また同定に利用する観測流量データを高度に規格化することにより、全球水文パラメータの同定プログラムの開発を行った。海水淡水化のモデル開発に関しては、まず現在入手可能な海水淡水化のデータベースならびに乾燥地での水利用データを利用することで、海水淡水化が導入される地理・気候・社会経済条件を割り出した。これらの分析結果をもとに、海水淡水化の利用されている地域(Area Utilizing Seawater Desalination; AUSD) と使用量を推定する海水淡水化モデルを開発した。
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