研究実績の概要 |
本研究は平成25-27年度の3年間で海岸におけるプラスチックの滞留時間を計測し、その決定要因を明らかにすることで滞留時間のモデルを開発するものである。 平成25年度に東京都新島村和田浜海岸に漂着するプラスチックフロート(PF)を対象として1-3ヶ月に1回の頻度で個体識別調査を実施して、PFの残余数が指数関数的に減少することが明らかにした(Kataoka et al., MPB, 2013)。 平成26年度には、PFの残余数が指数関数的に減少することから海岸を線形システムとみなして2つの海洋環境リスク(すなわち、海岸におけるプラスチック微細片の発生量及びプラスチックから海岸への重金属の溶出量)の定量化手法を開発した。この評価手法の開発によって、PFの滞留時間さえ分かれば、あらゆる海岸においてあらゆるシナリオの入力(海洋プラスチックの新規漂着量の変動パターン)に対する応答として、これら2つの海洋環境リスクを評価し、海岸清掃の有無による海洋環境リスクの軽減効果を定量的に評価することが可能になった(Kataoka and Hinata, MPB, 2015)。 平成27年度には、個体識別調査で明らかとなったPFの分布と挙動に加えて和田浜海岸背後にある宮塚山の山頂からの海浜流のビデオモニタリングにより、和田浜海岸に漂着したPFが海浜流によって再漂流することを明らかにした(Kataoka et al., MPB, 2015)。このことから、海浜流の水平スケールと発生確率が滞留時間を推定するための重要なパラメータであることが示唆された。
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