本研究では,鹿島港建設時の海洋投入土砂の現在の堆積分布状況を把握するために,海洋投入土砂中に含まれていたと考えられる古い年代の貝殻をトレーサーとして利用し,長期的な海洋投入土砂の時間的かつ空間的な移動堆積過程を評価する。さらに,その海洋投入土砂の移動・堆積過程を踏まえ,海洋投入土砂が浅海域の地形変化に及ぼした影響を深浅測量結果などと併せて総合的に評価する。 平成27年度においては,前年度までに対象海域において採取された海底土砂試料中(底面から延長80cm程度のコア試料)に含まれた貝殻の年代を追加分析し,現在における海洋投入土砂の広域な堆積状況を把握した。その結果,鹿島港の南海浜(鹿島港から約4kmおよび約6km)の水深20m付近の海底では,海洋投入土砂由来と推測される20cmから30cm程度の堆積層が確認された。一方で,鹿島港の北海浜の同水深域においては海洋投入土砂由来と推測される堆積層は明確に認められず,北に行くほど別起源と考えられる堆積層が多く確認された。これらのことから,鹿島灘の沖域においては南向きの沿岸漂砂が長期的には卓越していると推察された。 また,航空写真および深浅測量を用い,過去50年間の海浜地形変化を検討し,海洋投入土砂による地形変化への影響を評価した。その結果,海洋投入土砂が鹿島港南海浜における大規模な汀線前進を引き起こしたことを明らかにした。さらに,沖に堆積している土砂の岸方向への移動によって長期的な地形変化が生じる可能性があることを示唆した。
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