本研究は、カーシェアリングシステムが地方都市で普及された場合にもたらされると考えられる、諸効果を検証するものである。公共交通が普及しており、休日のレジャーや妊娠・育児期間など、非常用で利用されることが多い大都市での普及と異なり、公共交通が不便である地方都市では、自動車非利用者の活動療育拡大によるモビリティ格差緩和の効果などが期待される。 昨年度は、実証実験の実施準備・関係機関との調整を行った。学生カーシェアリング利用の可能性についての行政・事業者等に意見聴収等調整を行い、実証実験を準備・実施した。 本年度は、インタビュー調査等による実験の継続的なデータ収集と分析・取りまとめを行った。その結果、自動車をもたない学生がカーシェアリングの利用が可能となることによって、どのような行動が増加するかについて示した。利用前と比較して交流や余暇活動が増加していた。また、移動範囲の拡大に伴って、居住地域の地理知識の拡大も示されたほか、移動満足度や社交性に変化が見られた。このように、本研究の結果地方都市で自動車の非保有者が自動車を利用可能となることが移動機会の格差を緩和する効果がある可能性が示唆された。 また、住民が主体となって導入・維持するカーシェアリングは地域で交通システムを共有することによって住民の地域に対する意識を醸成する効果があると考えられる。本研究では、その可能性を検討するための基礎的な知見を得ることを目的として、住民で共有する交通システムを導入・維持している地区とそうでない地区の比較分析を行い、交通インフラを共有することによって、地域意識を醸成する効果がある可能性を示唆した。 なお、開発した実証実験のシステムを用い、別の地域でも実証実験を試行した。但し、これまでの実施地域と比較し参加者数が少なかった。同じシステムであっても地域ごとに課題が生じることが示された。
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