本研究は、近年、増加しつつある床面にデザインされたサインについて、バリアフリー整備ガイドラインの視点から、その有効性およびサインシステムとしての整備方針について検討するものである。 1年目は、晴眼者(非高齢者・高齢者)に対し、床面サインの有効性を検証するため、アイマークレコーダーを用い、床面サインをどの程度見ているかに関して調査を行った。その結果から床面サインはサインとしても、有効性の高いものであると考えることができる. そして2年目の今年度は、非高齢者・高齢者、弱視者に対し、読みやすい床面サインの文字サイズを検討した。実験手順として、被験者は,視覚病歴のない健常者とし高齢者30名,若年者30名とした.弱視者に関しては、模擬メガネをしようした。実験は視力検査・最小可読文字に関する実験・可読容易性に関する実験の順に行った.実験は暗室にて行い、視距離を5mとした. その結果、最小可読文字に関する実験では、立面に対する最小可読文字に床面最小可読文字係数を2~3倍すれば床面に対する最小可読文字に補正できることが分かった。可読容易性に関する実験の最適文字サイズでは、縦文字で高さ約90mm、横文字で文字高さ約80mmが必要だと分かった。弱視者の模擬実験では、視距離5mでは、視力0.02の場合での最適文字サイズは600mm、視力0.06の場合での最適文字サイズは300mmとなったが、これらの文字サイズはやや大きすぎるので、弱視者の視力を勘案すると、文字高さ120mm程度なら、高齢者等にとっても非常見やすく、視覚障がい2級程度(視力0.02)でも、1mから視認できる。以上より、床面サインの最適文字は、少なくとも120mm程度必要であることがわかった。今後は、床面サインは文字の見やすさだけでなく、発見しやすい設置場所等、また既存のサインとの関係性など、サイン計画を構築して行く必要がある。
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