研究課題/領域番号 |
25820256
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
小野寺 崇 独立行政法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 研究員 (30583356)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 炭素・窒素安定同位体比 / 下水処理 / 微生物生態系 / 高次生物 |
研究概要 |
下水処理リアクターでは,細菌,原生動物,微小後生動物などによって構築された生態系において,有機物分解や硝化反応などが行われるとともに,捕食-被食作用によって汚泥の減容化が進行しているため,微生物生態系における物質フローや食物網などを把握することは重要である。そこで本研究では,自然生態系における物質フローや被食―捕食関係の解析に用いられてきた炭素・窒素安定同位体比解析による下水処理リアクターの評価を行なった。 下水処理リアクターでは,流入下水と処理水における下水中の有機物の炭素・窒素安定同位体比が異なっており,処理過程における化学反応および生物反応によって安定同位体比が変化していることが示された。なお,下水処理リアクターでは,処理方式が異なる場合,安定同位体比も異なる傾向を示していた。また,保持汚泥や生息する高次生物の炭素・窒素安定同位体比は,リアクター内において空間的に異なる傾向を示していた。さらに,異なる種類の微生物では,同所的に生息する場合でも,異なる餌を利用している可能性が高いことが示された。 本研究により,下水処理リアクターでは,下水中の有機物,保持汚泥,生息する微生物などの炭素・窒素安定同位体比が大きく変化していることが明らかとなった。この結果,炭素・窒素安定同位体比は,下水処理システムにおける固形物の動態,リアクターの処理特性,微生物の被食―補食関係などを示すことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に得られた研究成果を論文としてまとめて海外学術誌に投稿することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究成果を踏まえて,今年度も実施計画を着実に遂行するとともに,研究成果を積極的に社会に発信していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は,先行的に行った実験が予想以上に順調に進行し,明確なデータが得られたことから,データ解析と論文執筆を急ぎ行った結果,当初行う予定であった実験を圧縮したためである。このため,当初の研究計画に遅れを生じている訳ではなく,より洗練した実験計画に基づき,繰り越した予算を十分に活用して実験を行うことができるため,今年度は当初の予想以上の研究成果が期待できる。 今年度は,次年度に得られた研究成果を発展させるため,繰越予算は主に実験を進めるための物品費などに計上する予定である。具体的には,研究代表者が自ら設計した,特殊な実験条件に設定可能な実験装置(バイオリアクター)を数台購入する予定である。また,実験を速やかに進行させるための消耗品などの購入を行う予定である。
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