研究課題
本研究では、炭素・窒素安定同位体比の指標を用いて、生物学的排水処理システムにおける食物網や物質フローの評価を行った。その結果、散水ろ床型排水処理リアクターでは、汚泥(微生物群集)の炭素・窒素安定同位体比は、排水の流れ方向で大きく変化していることが明らかとなった。そこで、リアクターにおける処理特性との関連性を評価したところ、流れ方向における有機物分解や硝化の進行が関係していると示唆された。具体的には、食物連鎖の進行や硝化反応による同位体分別の影響が考えられた。実際の排水処理システムでは、炭素・窒素安定同位体比の変化は、様々な要因による複合的な影響であると考えられた。そこで、各要因の影響を定量的に評価するため、排水処理リアクターを用いた実験系を作成して連続実験を行った。まず、ラボスケールの活性汚泥リアクターを用いた連続実験により、食物連鎖の進行に伴う汚泥量と炭素・窒素安定同位体比の関係性の評価を進めた。さらに、スポンジ担体を利用した散水ろ床型リアクターを作製し、人工排水を供給した連続実験により、流下方向におけるアンモニアおよび硝酸性窒素の窒素安定同位体比や保持汚泥の炭素・窒素安定同位体比の変化の把握を進めた。この結果、排水処理に伴う炭素・窒素安定同位体比の変化に関して基礎的知見を得ることに成功した。本研究成果は、排水処理システムにおける微生物生態系の理解を深め、処理性能の安定性に寄与する重要な知見になると考えられた。
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Water Research
巻: 68 ページ: 387-393
10.1016/j.watres.2014.10.020
http://www.nies.go.jp/subjects/22720_fy2014.html