現在,アジア地域のみならず世界的な水問題に向け、下水再生水を安全に利用するための国際規格作りが検討されており、今後、再生水の利用促進が期待されている。下水再生水利用時においては、安全に利用できるよう再生水中に残存しうる可能性のある病原微生物の挙動を把握する必要がある。そこで本研究では、再生水処理技術として紫外線消毒に着目し、対象病原微生物をノロウイルスとして、その消毒効果を把握した。得られた結果より、再生水の様々な利用用途、農業利用、親水利用、修景利用等の用途毎において、紫外線消毒によるノロウイルスの感染リスク評価を試みた。 平成25年度では、対象とする試験水のノロウイルスに対する紫外線消毒効果を評価するために、既存の定量手法であるReal-time PCR法に加え、増幅域を拡張した遺伝子定量法(Long-target-RT-PCR法:LT-RT-PCR)による定量方法を確立し、予備実験を踏まえLT-RT-PCR法による測定手法を構築した。 平成26年度では、過年度に構築した定量方法に基づき、水質性状の異なる試験水、主に懸濁物質濃度、紫外線透過度が異なる試料を用い消毒実験を行った。取得したデータを用い、再生水の利用用途毎のリスク評価を試みた。その結果、水質性状、特に紫外線透過度、濁度が多い試料では同一の紫外線エネルギーが照射された場合で、ノロウイルスの標的遺伝子減少割合が大きく異なることが分かった。リスク評価においては、二次処理水を原水とし平均紫外線量、40mJ/cm2で検討した際、農業用水、修景利用水、水洗トイレ用水に消毒後の水を用いることで、二次処理水を直接利用する場合と比較してノロウイルス感染リスクが1/10~1/30程度、減少することが分かった。 本研究における成果は、国内の学会(2件)にて発表し、現在、海外Journalへ本研究結果を投稿中である。
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