1)昨年度までに開発した水面乱流計測システムを野外実験で検証した.野外実験は,沖縄県石垣島の白保サンゴ礁内外において7月30日の日中に連続観測を行った.サンゴ礁内の比較的波高が低い条件下では,風波よりも低い周波数帯(0.08-0.4 Hz)の乱流データを使用することでガス交換率を算出できることが確認された.算出されたガス交換率は既往の風速による経験式よりも有意に高い値を示しており,これは過去に行った直接測定の結果と整合的であった.一方,サンゴ礁外の波高が高い条件下では,乱流データに計測システム自体の動揺の影響と考えられるバイアスが生じたため,ガス交換率の算出結果には疑問が残った.このバイアスは,計測システムの動揺を定量化することで補正可能と考えられるため,将来的に加速度センサーとの併用による計測システムの完成度の向上が期待される.なお,副次的な成果として,野外実験時の装置搬入の経験を基にして装置の梱包方法をより容易で安価にするための改良を行った. 2)上記の野外実験の結果を踏まえ,比較的安価な加速度計を購入し,その運用方法やデータの解析方法について室内実験で検討を行った.室内実験は港湾空港技術研究所のメソコスム実験水槽を使用し,造波条件下での計測システムの3次元加速度および3成分の角速度を計測した.同時に計測した乱流データには2秒の周期帯にスパイクが確認されていたが,同様のスパイクは鉛直方向の加速度でも確認されていた.これらの結果から,水槽実験の条件下では,加速度のデータから係留システムのバイアスを容易に除去できることが確認された.水槽実験では高波高条件の再現が困難であるため,今後は野外実験を通してバイアスの補正方法を確立する予定である.
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