研究課題/領域番号 |
25820260
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
池永 昌容 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50552402)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 免震構造 / ダンパー / フィルタ / 変位制御設計 |
研究概要 |
本研究では免震構造物を対象に、免震層変位を抑制しつつ上部構造の床応答加速度の増大を最小限に抑えるために提案された変位制御設計を実現することを目的としている。変位制御設計を実現する手法として、今年度はまず擬似複素減衰制御に関する解析的検討を行った。擬似複素減衰制御においては、免震構造物のような固有周期4秒程度の長い固有周期を有する振動系に対して、特に長周期地震動を受けた場合には有効であることがわかっているが、短周期成分を多く含む地震動などを受けた場合に関しても検討を加えるとともに、その擬似複素減衰制御の改善をめざした。 まず入力地震動に関する検討の結果、免震構造物の固有周期よりも短周期成分を多く含む地震動に対しては、床応答加速度が理想的な変位制御設計と比べて増大することを明らかにした。 そこで、短周期成分の振動による床応答加速度の増大を抑えるために、擬似複素減衰制御のアルゴリズムに2種類のフィルタを追加することを検討した。追加するフィルタは、擬似複素減衰制御における復元力の計算において、まずは短周期成分をカットするためのローパスフィルタを適用する。ただし、ローパスフィルタを用いると復元力に位相遅れ(時間遅れ)が生じるため、結果として変位制御設計に比べて床応答加速度が増大してしまう。この問題を解決するために、ローパスフィルタによって生じる時間遅れを解消する、位相を進めるフィルタを設計し適用した。なお位相を進めるフィルタとしては、波形の全時間情報が必要な通常の信号処理とは異なり、現時刻から未来の波形情報を減衰自由振動をした場合の波形情報として仮定し、その波形情報を求めるフィルタを設計、適用した。その結果、これまでの擬似複素減衰制御と比べてより入力地震動に対する適用範囲が広い擬似複素減衰制御を実現できることを、数値解析結果から明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画において、平成25年度は擬似複素減衰制御の適用範囲同定と擬似複素減衰制御の改善、そして振動台実験のための予備解析、制御を適用するMRダンパーの設計・製作を予定していた。これに対して、本年度は特に数値解析に重きをおき検討を進めてきた。擬似複素減衰制御に対する適用範囲とその問題点について明らかにするとともに、その改善手法についても提案し、その適用範囲拡大に数値解析の上では成功している。また、平成26年度に計画している振動台実験に対する予備解析においても、提案した擬似複素減衰制御修正案による改善結果が見られた。MRダンパーの設計・製作については、これらの予備解析結果を受けて現在設計を進めている状態であり、平成26年度中には予定している研究計画を十分に遂行できると考えられる。以上の理由より、現在までの達成度はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、修正を加えた擬似複素減衰制御を適用できるMRダンパーの設計・製作を進めるとともに、そのダンパーを縮小免震試験体に適用した振動台実験を進める予定である。また、これらの結果に関して国内外の査読付き論文集への投稿を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
MRダンパー製作のための予算に関して、本年度はMRダンパー設計のための解析的検討を主に行った結果、使用計画と比べて設計費に差異が生じたため、次年度使用額が生じる結果となった。 現在MRダンパー設計を進めており、本年度の中頃を目処に使用計画どおりの予算執行スケジュールに戻る予定である。
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