研究課題/領域番号 |
25820262
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松田 和浩 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 助教 (80567397)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 木質制振構造 / ダンパー / 地震応答解析 / 応答スペクトル / 等価線形化手法 |
研究実績の概要 |
木質建物に制振技術を適用し、効率的に耐震性を向上させようとする研究・開発が盛んに行われている。研究代表者らは膨大な数の実験や解析を通して、エネルギー吸収性能に優れた制振壁を開発し、それを組み込んだ木質架構の動的挙動を把握するとともに、その有効性を示してきた。一方、近年はそれらを合理的に用いるための制振設計法の必要性が高まっている。 そこで、木質建物を想定したバイリニア+スリップモデルを主架構に持つ多質点系を対象とし、目標の変形クライテリアを満たすための最適なダンパー量・分布を理論的に求める手法を提案した。デバイスには粘弾性ダンパーを用い、提案した手法は等価線形化と応答スペクトルに基づいている。等価線形化理論は約1万ケースもの一質点系の数値解析により精度を検証し、時刻歴応答解析の結果とよく整合することを確認している。多質点系は一質点系に縮約し、上記理論に基づいて必要ダンパー量を求め、その後各層にダンパーを分配する手法となっている。様々な剛性を持つ2, 3, 5層のモデル計648ケースで検証した結果、層間変形角を概ね目標値に制御でき、特定層への変形集中も防げることを示した。また、ダンパー設置によるシステムの動的特性の変化や応答低減の傾向も整理し、ダンパーと直列につながる支持材の剛性を高めることの重要性についても確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、木質制振壁を戸建住宅に適用する際に必要となる様々な検討を行うことにより進めるものである。本年度の成果により、粘弾性ダンパー制振壁を用いる場合の、等価線形化手法に基づく応答制御法を提案した。また、ダンパーや制振壁の履歴を極めて簡易なモデル(バイリニアモデルと線形粘性モデル)の足し合わせで求める手法も提案した。これらを応用することで、時刻歴応答解析による方法だけでなく、等価線形化手法に基づく方法についても、様々な履歴特性を有する制振壁に対して設計することが可能になると考えられる。 本研究は予定した補助事業期間を延長することとなったが、これは計画時よりも幅広い課題に取り組んでいるためであり、計画時の想定したペースに対しては遅れていない。よって、概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策を以下にまとめる。 ①提案した制振壁の簡易履歴評価手法を用いる時刻歴応答解析について、設計法の具体的事例を作成するとともに、詳細なモデルとの比較を行い、設計法の精度を検証する。 ②本研究の成果をまとめ、小規模住宅制振設計指針を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題の成果として作成している戸建住宅用の制振設計指針について、当初の予定よりも精微なものにする必要性が生じたため。 これは指針内で対象とする制振部材の特性の範囲を大幅に広げたことに起因する。
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次年度使用額の使用計画 |
延長する補助事業期間では、制振部材諸元を広範囲に変化させた時刻歴応答解析を行い、結果を制振設計指針へと反映させる。解析補助に対する学生への謝金や成果報告費として繰り越し金額を使用する。
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